第7話 最初の脱落者

第七話 最初の脱落者


サイド 剣崎蒼太



 だいたいわかってきた。


「このっ!逃げんな!」


 大ぶりに振るわれる鎌を躱し、透明な尻尾を剣で上から叩き落す。


 あの尻尾、恐らく固有異能だろう。目で視えず、魔力も追えない。風を裂く音も聞こえないし、試していないが熱感知も効かないだろう。スピードもパワーもかなりのものだ。正面から受けるのは厳しい。


 だがそれがどうした。視えなくともそこにあるのは変わらない。周囲の空気を第六感覚で読み取れば軌道などわかる。


 それだけではない。鎌足の視線、呼吸。それらも見えない尻尾の脅威を格段に下げてくれる。


「当たれよぉ!」


 足元に突然開いた穴を直前で跳んで回避。追撃してきた尻尾を柄で横から押す様に受け流す。


 あの尻尾の長さは三メートル前後。感触からして先端に針のような突起がある。横薙ぎの攻撃より突き刺すような軌道が多いから、毒針の類がついているのか?剣で受けた感じ酸ではないはず。


 だとしたら『随分と相性がいい』。


「逃げてばっかでよぉ!」


 横の壁に銃が並べられる。同時に鎌足へと距離をつめた。


「ちぃっ!」


 鎌と尻尾を振り回して間合いを強引にあけてくる。その暴風みたいな攻撃をさけて、回り込むように側面に。


 奴め、攻撃と罠の操作は同時に出来ないらしい。異能の能力不足、というよりは単純な練度不足か。


 銃との間に鎌足を挟めば、それだけで撃てなくなる。相手もたかが銃弾が数発当たったぐらいでは傷一つつかないだろうが、動きが止まればそれでいい。剣の間合いに持ち込めば自分が勝つ。


 だが相手の攻撃は尻尾も含めて必殺の一撃。防御無視の鎌に、転生者から見ても剛力としか表現できない不可視の尻尾。直撃は絶対に避けなければ。


 兜の下で冷や汗を流しながら、ただひたすらに迫りくる猛攻に対処する。


 冷静に、着実に。大丈夫だ。勝てる戦いだ。焦るな。侮るな。過信も過小もするな。一歩ずつ、勝ちへと進め。


「調子にのるなぁ!」


 業を煮やした鎌足が尻尾を伸ばす。狙いはこちらの左足。持ち上げて回避すると、そのまま踵で踏みつけた。


 この尻尾にも関節はある。剣で弾いた感触からして、鎧の関節部同様隙間があった。なら、そこは比較的簡単に斬れるはず。


 尻尾は伸びきっている。鎌は届かない。剣を振りかぶる。


「馬鹿がぁ!」


 その時、尻尾の先端から紫色の煙が出る。


「転生者でも死ぬ毒ガスだぁ!油断し過ぎなんだよぉ。ダボが!」


 そうか。想定内だ。


 煙は特に気にすることなく両手に握った剣を横一線。尻尾の関節に叩き込んだ。硬い感触。だが切れない程ではない。


「な、ああ!?な、なんで動けっ」


 動揺しながらも距離をつめて鎌を振ろうとする鎌足。だが一歩遅い。


 蒼い炎もまき散らし、強引に尻尾を焼き切る。


「あっづ!?」


 燃えあがる炎に、鎌足が後退った。だが距離を開かせない。向こうから来てくれたのなら好都合


 上段から振り降ろした刃が、大鎌の柄で受け止められる。


「が、この……!」


 膂力はこちらが上。体勢もあり力任せに剣を押し込むと、鎌足が歯を食いしばって耐える姿と、それでも鎌が押し込まれる姿が見える。


 その時、第六感覚に反応。右足をずらすと、そこに鎌足の足が。どうやら踏みつけようとしてきたらしい。咄嗟に奴の足を蹴り飛ばした。


「いっ」


「ふん!」


 バランスを崩した所を押しこむ様に剣を振るい、更に体勢を乱す。


 勝てる。生き残れる。こいつを倒して、自分はここを乗り切るんだ。


 大鎌の柄を剣で跳ね上げると、奴の胴体が無防備に晒される。このまま胴を横薙ぎに斬れば、いかに転生者といえど致命傷。とりあえず動けなくすれば止めなりなんなり好きに出来る。


 剣を素早く引き戻し、胴を狙う。


「が、あああああ!」


 鎌足もこのままでは死ぬとわかっているのだろう。目を限界まで見開き、断末魔のように吠える。


 そして、視界の端で壁の一部が動く。罠の位置全ては把握できていないが、それでもここら数部屋の罠はほぼ使い切ったはず。


 壁から覗くのは、たった一丁の猟補用ライフル。奴の表情からも、第六感覚からもこれが苦し紛れの一撃だとわかる。


 今更銃弾の一発で自分を止められるわけがない。あれでは眼球に当たっても目にゴミが入ったのと大差ないのだから。


 そもそも、銃口がこちらに向いていない。狙いなんて碌につけていない。ただ咄嗟に出しただけ。


 こんな物無視すれば――。


「あっ」


 自分は罠を使い尽くさせる為、出来るだけ同じところをグルグルと回る様に立ちまわってきた。


 だから、どこに人質の子供がいるのかわかる。わかってしまう。


 この位置、この角度は丁度、最初に見た子供が縛られている部屋が銃口の先に――。


 乾いたような発砲音。それを耳にしながら、左手で受け止めた銃弾に視線が行く。掌で受け止めたそれは、先端をへこませてゆっくりと重力に引かれて落ちていく。


 反射だった。なにかを考えての動きではない。左手を剣から手放し、視線も鎌足から外して全力で銃の射線上に左手を滑り込ませた。


 そんな姿が、隙だらけでないはずがない。


「おおおおおおおおおおあああああああ!」


 狂ったような雄叫びと共に振り降ろされた大鎌が、自分の左腕を通過していくのが見えた。


 鎧の上からは無傷。しかし、肘から先の感覚か消え失せ、直後に脳が焼かれるような激痛が襲い掛かる。


「あ、ぐぅっ……!」


「ひははははは!馬鹿がよぉ!」


 痛みで視界がバチバチと飛ぶ中、第六感覚だけで追撃を回避しようとする。だが、痛みと重心のズレが動きを鈍らせる。鎌が左足の腿を撫でていき、鎧の内側で血が溢れる。


「終わりだぁ!」


 左手足がまともに動かない。痛みに支配された頭で剣を振るい鎌の柄を弾こうとするが、体が思った通りに動いてくれない。


 奴の鎌が剣を素通りし、左肩から鳩尾にかけて深々と切り裂いた。


「がっ……」


「無様だなぁ、おい。やっぱ俺は神様って奴に愛されてるぜぇ!これがその証明だ!」


 鎌をこちらの胸に食い込ませたまま、何かを叫んでいる鎌足。だが、その内容が頭で理解できない。


 傷一つない鎧の内側で、流れた血が衣服を濡らす。


「女神のラブコールには応えてやらないとなぁ。こいつは適当に埋めて」


 胸に生えているかの様に食い込んだままの鎌を、『左手』で掴む。


「は?」


 呆然としたような声が聞こえた気がした。それに構っている余裕はない。


 震えそうになる右腕を振り上げ、引き抜かれそうな大鎌を左手で離さず、余力の全てをのせて剣を振り下ろした。


「が、ああああああああああああ!?」


 まるで鏡写しの様に、蒼黒の剣は鎌足の左肩から胸にかけてを深く切り裂いた。


 悲鳴を上げながら、奴は大鎌を手放して数歩後退る。フラフラとした足取りで、足をもつれさせて受け身も取れずに背中から倒れた。


「が、ぎっ……!」


 無我夢中で大鎌を胸から引き抜く。肉と皮膚を引っ張る感覚。触れている骨がずれていく。目からは涙がこぼれ、口端からは血の混じった唾液が溢れる。


 大鎌を抜きながらも、既に『再生』は始まっている。『抜けば死なない』と自分に言い聞かせながら、どうにか大鎌を引き抜いて投げ捨てた。


「すぅ……ふぅ……っ!」


 左手で鎧越しに胸を抑えながら、剣を杖代わりにして倒れるのを防ぐ。



『エリクシルブラッド』


 エリクシル。それは『エリクサー』と呼んだ方が聞き覚えのある物かもしれない。いかなる傷も病も治癒し、不老不死を与えるという伝説上の霊薬。


 だが、エリクシルは『賢者の石』と同じ物として扱う伝説も存在する。そして、自分の場合はそれに当てはまる。


 何が言いたいかと言えば、自分の血潮は賢者の石であり、エリクサーでもあるのだ。それこそが自分が有する二つ目の固有異能。


 血がエリクサーなのだから、自身は常にその効果を受けている事となる。幸いと言うべきか、今日この日まで肉体の成育はなされていたので不老ではないし、死ぬ時は死ぬと感覚でわかる。


 だが、この傷でなお死なないらしい。自分でも今日初めてどれほどの効果か知った。



 異能『食いしばり』で耐え、即死でさえなければ癒すエリクサーの血が命をつなげてくれた。


 必死に肺へと空気を取り込みながら、未だふらつく足で鎌足へと迫る。歩きながら両手で剣を逆手に持ち替えて、狙うは奴の命ただ一つ。


 殺される。その思いだけでいっぱいだった。


 今、自分は明確に死にかけた。異能と固有異能が嚙み合わなければ死んでいたに違いない。そう確信が持てる。


 戦装束の分、こちらの攻撃は減退された。奴はまだ生きている。


 今は瀕死の重傷だ。だが、転生者ならたとえ治癒系の能力を持たずとも復活できる。それこそ三日もあれば戦闘に支障はないほどに。


 だから今殺せ。殺さなければこいつは自分を殺しに来る。


 死にたくない。死にたくない。死にたくない。


 鎌足の体を跨ぎ、剣に魔力を纏わせながら振りかぶる。首に刺し込むと同時に燃やす。骨も残さず燃やし尽くす。万が一にもこちらを殺せないように、こいつを殺さないといけない。


 虚ろな目でこちらを見上げる鎌足と、目が合った気がした。血でまみれた口で、何事かを呟く。


 言葉にもなっていない空気を喉が吐き出したに過ぎない。だというのに、第六感覚はその意図を読み取ってしまう。


『死にたくない』


「あっ」


 その言葉の意味を頭の中で咀嚼するのと、剣を振り下ろしたのが同時だった。


 剣はほんの少しの抵抗のあと奴の首を貫いて切っ先を床にぶつけ、刀身から広がる様に鎌足の全身を蒼い炎が包み込む。


 剣を引き抜きながら、よろよろと後退って、背中に壁がぶつかってようやく止まる。


 自分の目の前で、鎌足が燃えていく。首の皮だけでつながった首が、炎で焼き切れて床を転がっていった。


 どれぐらいその光景を見ていたのかわからない。数秒かもしれないし、一時間かもしれない。


 自分が動けたのは、鎌足が黒い炭に変わった頃だった。無意識に調整していた炎は、床を焦がしこそすれそれ以上燃え移る事はなかった。


「あ、あっ……」


 ぼんやりとした頭で、右手に握った剣を手放そうとする。だが指が動かない。慌てて左手で外そうとするが、ビクともしない。


「く、くそ、は、はずれない……」


 ガチャガチャと鎧がぶつかる音が響く。廃工場にそんな音が反響する中、他の音が聞こえた気がした。


 全力で音がした方に振り向く。そこには、捕まっていた子供が塞がれた口ですすり泣いている姿だった。


 ああ、そうだ。この工場には鎌足に人質にされていた子供たちがいる。今の今まで、その事が頭から抜け落ちていた。


 子供と目が合う。庇護すべき対象。守った『はず』の存在。しかし、その視線にはただ恐怖だけが詰め込まれていた。


 捕まった事へのものではない。命の危機に瀕したことではない。あれはただ、自分への恐怖で塗りつぶされている。


「ひっ、あ、あぁ」


 気が付けば逃げ出していた。子供の視線から逃れようと、鎌足だった物から離れようと。


 壁を突き破り外に出て、工場が見えないぐらいの所まで足を動かした。人目を避けるようにビルからビルへと飛び移り、いつの間にか最初の夜に訪れた公園の近くに立っている事に気づく。


 疲労はそれほど感じていないはずなのに、息が荒く肩は揺れ動く。元の服に戻ると公衆電話に向かい、震える指先でボタンを押して警察に連絡する。


『はい、こちら110です。なにが』


「――区、●●■の廃工場に子供が多数捕まっています。すぐに助けてください」


『え、ちょ』


 一方的に通話を切り、その場にへたり込んだ。少しだけ乾いた血が、衣服に張り付いて気持ち悪い。


 たぶん、鎌足が死んだ今なら廃工場の罠は起動しないはず。もとより異能がなければまともに運用できない滅茶苦茶な配置になっているはずだ。よほどやらかさなければ危険はないだろう。


「なにしてんだ、俺……」


 一から十まで愚行の数々。我がことながら意味が分からない。


 数秒だけそうした後、どうにか四肢に力をいれて立ち上がる。もう、人を殺してしまったのだ。踏み越えてはならない一線を越えてしまった。


 この感覚に慣れねばならない。さもなければ、今度こそ死んでしまう。


 懐から伊達メガネを取り出して装着し、白い息を吐いた。



*         *          *



「お帰りなさ、ってなんですかその恰好!?」


「こっちのセリフなんだが……?」


 新城さんの家に戻ると、玄関にゲリラがいた。


 迷彩柄の頑丈そうな上下。ここまではわかる。大きな胸を強引に押し込んだらしい防弾チョッキと鉄板でも仕込んでそうなブーツも、ギリOKとしよう。


 なんで手にショットガンを持っているの?よく見たら明らかに銃刀法違反なゴツイナイフも腰からぶら下げているし。


「ちょ、その血!だ、大丈夫なんですか!?きゅ、救急車!包帯!」


「あ、いや、これはもう治っているから」


 なんか、驚きすぎてさっきまでのナーバスな感情が吹き飛んだ気がする。なんなのこの子。


「そ、そうなんですか?珍妙な体してますね……」


「君に珍妙とか言われたくないんだが?」


 今世紀最大の侮辱な気がする。容姿以外珍獣と評すべき存在にそう言われるのは凄まじく不本意だ。


「それより、その銃は……?」


「これですか?お父さんがいざとなったら使えって防犯用に」


「……その恰好は?」


「お父さんがいざとなったら着て逃げなさいって」


「……銃、使えるの?」


「お父さんにハワイで」


 どこの名探偵で……???


「お父さん本当に警察?それって法律的にアウトでは?」


「前にこの銃と弾ならギリギリでグレーを狙えるって言ってました!」


「あ、ふーん」


 絶対まともな警察じゃないのはわかった。よく考えたら家に魔導書がある家庭だったわ。魔導書をどういう経緯で見つけたかは知らんけど。


「とりあえず……着替えます?お風呂は沸いてないですけど、シャワーぐらいなら」


「あ、どうも」


 お言葉に甘えてシャワーを浴びさせてもらい、替えの服に着替える。困った……実は服は二セットしか持ってきていない。片方血でダメになってしまったのだが……洗濯用魔道具を家に置いてきてしまったのが悔やまれる。


 シャワーから出ると、新城さんがココアを手に待っていた。


「とりあえず温かい物どうぞ」


「ありがとう、助かる」


 ココアを手に椅子に座ると、彼女も同じく対面に腰を下ろした。服装は普通のカーディガンに変わっている。


「それにしても心配しましたよ。メールがあってから二時間ですよ?その間電話するべきか、けど取り込み中だったらと迷ってましたよ」


「え、二時間?」


 慌てて壁にかかっている時計に目をやると、時刻は20時を過ぎていた。


 戦闘自体はそこまで経っていないはず。となると、自分は鎌足が燃えている姿を随分見ていたらしい。


「もうこうなったらしらみつぶしに探すっきゃないって思いましたよ、もう」


「ご、ごめん。けどさっきの恰好で出たら速攻でお巡りさんに捕まるんじゃ?」


「……とにかく、報連相をしっかりしてください!」


「あ、はい。本当にすみません」


 前世25歳。今生で15歳。精神年齢は合算するものではないとは思うが、合計40にもなって女子中学生に社会人の常識で説教されてる。しかも片方ずつで考えても年下。


 わりとガチでへこんでいると、そっぷを向いた新城さんがテレビをつける。


『東京の皆さん、こんばんは』


「っ!?」


 その声には覚えがあった。前に調べた時、中東で演説をする姿がネット上にアップされていたから。


「なん、で……」


 ボブカットの白髪に、病的に白い肌。それらすら赤い瞳を輝かせる飾りつけとばかりに麗しいその顔立ち。均整の取れた肢体を黒のボディスーツと白い布を巻きつけた不思議な服装。


 金原武子。推定転生者であるあの女が、テレビに映っていた。


『今私は東京にあるテレビ局で、彼らの善意のもとこの放送をしています』


 白い布地に飛び散った赤い物に気づいていないかのように、彼女は話を続ける。


 まるで舞台女優だ。人の極限とも言える美貌に、非現実的な服装。金原の芝居がかった振る舞いが余計にそう思わせる。


『東京は昨日から24日までの七日間の間、我ら使徒の戦場となります』


「は……」


 こいつ、ぶっちゃけやがった。


「それって」


「たぶん、そうだろうな」


 こちらに視線を向ける新城さんに頷いて返す。


『巻き込まれたくない人はお逃げなさい。そして、他の使徒に私から提案があります』


 両手をゆっくりと広げながら、金原は笑みを浮べる。まるで難しい問題を解いた子供のように、自慢げで無垢な笑みを。


『話し合いで勝利者を決めましょう。そして、私の願いが一番正しいので皆さん自害してください』


 何を言っているのかわからなかった。前半はわかる。だが後半はなんて言った?


『私の願いは恒久的な世界平和。争いはなく、飢えもなく、皆が幸福でいられる世界。これ以上に正しい願いなどあるはずがありません』


 なんなんだ、こいつは。本気でわからない。


 世界平和。確かに正しいか正しくないかで言えば、倫理的に見て正しいだろう。


 だが世界平和とは『何をもって平和』なのか。何をもって『幸福』なのか。その具体性が一切浮かばない。


 というか、それをあの神に願うのか?あの邪神に?


 ……鎌足の口ぶりからも思ったが、もしかして他の転生者は奴が邪神であると気付いていない?よく考えれば、自分も気づけたのは転生直前に付与された異能があったからだ。


 だとしても、そんな一歩間違えたら逆に世界滅亡しそうな願いをするつもりなのか?


『この宣言に従わない者は全て悪です。私は悪者に屈しません。全身全霊をもって、粉砕いたしましょう』


 一方的な正気とは思えない宣言をして、金原は右手を天に掲げた。撮影されているのはどこかの屋上らしい。詳しい場所までは土地勘もないのでわからないが。


 そして、外から猛烈な魔力反応。その時になってようやく気付いた。そうか、自分と鎌足の戦闘で他の転生者が動いた様子はなかったのは、奴が他で暴れていたからか。


『私が神様から与えられたこの拳で!正義をなしてみせましょう!』


 金色の籠手から放たれた魔力の塊。その密度も規模も、自分のそれを上回っている。むしろ、自分が鎌足との戦いでこれに気づけなかった方が驚きだ。


 曇天を穿った金色の光が爆発。カメラが横転してテレビ画面が映らなくなった後、遠い所から轟音が響いた気がした。



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