猫の婿取り(5)

 そうと決まれば話は早い!


「善は急げだ。さあさ」


 さっそく顔合わせだ、きれいに身支度整えなさいと、弟御がパンパンと手を打てば、娘っ子は仲居に囲まれ、がやがやと連れていかれた。


 一人残った弟御は難しい顔。


 手元には兄からの手紙。


 腕組みして、思案顔はまるでへそを曲げた仁王のよう。


 --息子があの娘のことを好いている。


 娘のことを悪くは思わないが、いかんせん、家が釣り合わない。


 息子には隣村の庄屋の娘を引き合わせたい。


 それでさらに家を大きくしたいのだ。


 おまえにとっても悪い話ではないはず。


 そちらにやった娘は何とか町にとどめおくか、いっそそちらで嫁にでもやれば、ぼんくら息子も熱が冷め、あきらめがつくだろう。--


 頼むといわれてもなあ……。


「人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られてしまえと言われるのに……」


 弟御は深いため息。


『あの子がそれでいいなら、私は何も言うことないわ』


 ヒメは独り言ちた。天井裏ですべてを聞き届けて。


『……ぼやぼやしているほうが悪いんですもの』


 庭にはまたスズメたちが降り立った。

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