第9話 スター・ライトは救出する!





 僕、否、ライトとヌルヌルは、傭兵募集の広告を手に、カドカー王国を訪れた。

 城塞都市の正門側はピンサローの目が光っているので、都市側面の、カドカー王国防衛圏から城門へと向かう。辿りついた城門には、たくさんの冒険者が列を為していた。


「『待て。通行証を見せろ』」


 完全武装の門兵に呼び止められる。ライトとヌルヌルは通行証を提示して、兵舎へと案内された。


 ⚃⚄⚄


「『カクヨームタウンの冒険者か。噂は度々耳にしている。確か、スター・ライトとその愛人のヌルヌルだな?』」


 しおんが、兵舎の騎士団長を演じて言う。


「断じて、愛人ではありません」

「『そうよ。私達はもうすぐ夫婦になるんだから』そう言って、ヌルヌルはライトに抱き着いて、唇を奪──」


 僕はヌルヌルを咄嗟に引き離す。そして、


「いいや、それも断じて違う!」


 いつも通り言い放った。


 ⚃⚄⚅


 騎士団長の作戦はこうだ。


「『ピンサローを暗殺する』」


 今回、招かれた冒険者は三組。その三組がそれぞれ八人の兵士を連れ、ピンサローの暗殺へと向かう。まず、騎士団本隊が正面からピンサローの軍に野戦を仕掛け、注意を引く。その間に、三組の部隊が裏手から敵陣深くに突入して、ピンサローを仕留める。

 そういった、単純な作戦だった。


「『ねえライト。今回は、どんな作戦でやるの?』」


 ヌルヌルが言う。

 すると、ライトは「エアリアルサーバント」の魔法を発動した。

 忽ち大気が歪み、風の精霊が召喚される。


「『何用か? 召喚者よ』」


 しおんが精霊になりきって言う。


「僕の妹の、プラチナの居場所を知りたい。出来るだけ正確に」

「『ふむ。うけたまわった』」


 すぐに、風の精霊は兵舎を飛び出した。

 ここまで、しおんは門兵と騎士団長と風の精霊とヌルヌルを、全て一人で演じ分けていた。彼女には、本当に演技の才能があるらしい。

 間もなく、風の精霊が帰還する。

 風の精霊の情報によると、プラチナは、敵陣後方のテントに幽閉されているらしい。つまり、敵に背後から奇襲をかける時、そのテントはすぐに目に入る訳だ。


「『ねえライト、プラチナを捜してどうするの?』」

「普通に戦わない。なるべく楽に勝つのが、僕等のやり方だろ?」


 ライトはヌルヌルにウインクを返した。


 ⚅⚃⚅


 作戦が開始された。

 砲撃と、火力魔法ファイアボールの爆発音が一斉に鳴り響く。王国騎士が突撃する声も響き渡る。


「始まったね。行こう」


 ライトはヌルヌルと兵士を伴って、敵軍の背後に奇襲をかけた。


「『あ。見えた。あのテントだよ!』と、ヌルヌルが叫びます。ライトはどうしますか?」

「よし。僕はテントに突入して、プラチナを救出する! ヌルヌルと兵士諸君は、手筈通りそこらのテントに火をかけて、敵の注意を引いてくれ」

「『わかったわ。ダーリン』」


 ライトは、単身、テントへと駆け込んだ。そこには二体のオークがいて、プラチナを見張っていた。


「しおん。イニシアティブだ!」

「ええ。解ってる」


 しおんは僕に応え、サイコロを振る。数字は2と3。ギリギリ僕の勝ちだ。


「うおお! ライトニング・ボルト!」


 僕は雷撃魔法ライトニング・ボルトで、オークを一体倒した。敵のターンになり。もう一匹の鬼が大斧を振り抜く。

 命中判定……攻撃は命中。ライトはかなりの打撃を受けた。それでも!

 そこからは白兵戦になり。僕は鬼と真正面から切り合った。


「攻撃が命中。オークに10点のダメージ。オークを倒しました」


 しおんがDMの仕事を果たす。

 僕は白兵戦を制し、鬼を打ち負かした。


「『お兄ちゃん、お兄ちゃん……!』テントにはおりがあり、そこから、妹のプラチナが涙ながらに叫び続けています。どうしますか?」

「助けるに決まってる。「解錠」の魔法を発動!」


 ライトが解錠の魔法を唱えると、鍵が開き、檻からプラチナが飛び出してきた。




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