第6話

   

 夕飯を食べ終わる頃には、私の胸の内の動揺も、すっかり収まっていた。

 おそらく仕事が忙し過ぎて、帰りの電車の中で居眠りして、夢でも見たに違いない。電車から降りた後も寝起きみたいにボーッとしてしまい、夢と現実の区別がつかなかったのだろう。それで「彼を殺してしまった」と思い込んで、近所をウロウロしていたのだ。

 お風呂に浸かってリラックスすると、そんな解釈が頭に浮かんでくる。

「なんだか馬鹿みたい。完全に笑い話だわ」

 独り言が浴室に響く。

 いっそのこと彼にも話して、二人で笑い飛ばしたいくらいだった。

 しかし、いくら夢とはいえ「あなたを殺しちゃった」は言わない方がいいだろう。それよりも、一応は罪悪感もあるのだから、今夜はいつも以上に彼に尽くそう。

 そう考えて、お風呂を出た後、珍しく私の方から誘ったのだが……。

 夜の営みの中。

 恐ろしい出来事が起こった。

   

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