第5話

   

「え? どういうこと?」

「どういうことも何も、夕飯の準備は優子の仕事だろ。もう俺、腹ペコだぜ」

 私のヒモ状態に甘んじている、いつもの彼だった。

 普通に生きているし、死んだ痕跡も全くない。

 ならば……。

 私が彼を刺し殺したこと。あれは、悪い夢だったのだろうか?

「うん。わかった……」

 納得はいかないが、そう理解して現状を受け入れることにして、

「待たせてごめんね。急いで支度するから、もうちょっと待っててね!」

 わざとらしいほど明るく、彼に声をかける。

 口では「待たせてごめんね」だったが、心の中では「夢の中とはいえ、殺しちゃってごめんね」という気持ちだ。

 謝罪の意味も込めて、今日は腕によりをかけて御馳走を用意しよう。私はそう思った。

   

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