第7話

   

「えっ……。何これ……」

「どうした、優子?」

 途中で愛撫を止めた私に、不思議そうに声をかけてくる彼。

 それに答えることも出来ずに、私はただ一点を凝視していた。

 彼の胸に、大きな傷跡があったのだ。ちょうど、手を当てれば心臓の鼓動が感じられる場所だ。

 私の視線に気づいて、彼の方が言葉を続けた。

「どうしたんだよ、今さら。その手術痕なら、ずっと前からあっただろ?」

「嘘……」

 彼にも聞こえない程度の小声で呟いてから、私は顔を上げて聞き返す。

「手術痕なの、これ……?」

「よくわからないけど、そうだと思うぜ。俺も覚えてないから、よほど小さい頃の手術の跡だろ。そんな病気や怪我があったことすら記憶にないくらい、すごく小さい頃の話だ」

 けろっとした口調で語る彼とは対照的に、私は恐怖で固まってしまう。

 彼よりも私の方が、真実を理解していたからだ。

 これは私が彼を刺し殺した跡なのだ、と。

   

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