9 秀吾特製晩ごはん

「いただきますするよ〜、せーの!」

「「「「「いただきます!!!」」」」」

うわ、五人が本気で声揃えて言うとこんなに響くんだね。自分も言いつつビクッってしちゃったよ。

「今日のご飯はね〜、肉じゃがに〜赤飯に〜お味噌汁に〜ほうれん草のお浸しを作りました!!」

「めっちゃノリノリじゃん、それにTHE・和だね。で、赤飯…?」

「みんなが家族になったから〜みたいな感じ!一応お祝い感出てない…?」

「なるほどね、全然分からなかった。さっきも話したけど、お泊り会みたいな感じの気分なんだよね~」

今私は楽しいよ、でもまた現実味が薄れてきている気がする。親と子の間が、すごい遠くに感じちゃうの。なんだろう、胸に穴が開いたような空虚感や、湿っぽい物憂げな気持ちがある。なんでこんな楽しいひとときに考えているのかと自戒しつつ、空っぽでいてもいいのかも…という誘惑を振り払う。

「……大丈夫?」

「え、うん全然大丈夫だけど?なんか心配かけてたらごめん」

「それならよかった」

玲吾は時々自分の心の中を読んだような事を言うことがある。心配してくれて嬉しいな…なんてね。ただでさえ複雑な状況だけど、楽しんでる自分もいるのだ。それを悟られないよう精一杯笑みを浮かべ、明るく振る舞うのだ。

「みんな食べ終わったみたいだし、ごちそうさましよっか!」

秀吾は全体的に暗い雰囲気になっていたものを明るくするように、から元気で言った。

「うん、そうだね!」

心底楽しそうに言う玲吾には悩みなんてあるのだろうか。人間悩みは付き物だから、玲吾は、"悩んでいる素振りを見せない"ということを長所と見ているのだろう。ときには短所となるものだが、それすらもいい方向に進ませる、ヒーローなんだ。

「じゃあせーーの!!」

「「「「「ごちそうさまでした!!!!」」」」」

いただきますのときも思ったけど声でかすぎでしょ(笑)

やっぱり家族の"声"を聞くと家族という感じがするのかもしれない。私は、ゲームをしながら巫山戯あって、笑って、楽しむということが、一番現実味を感じられるのかと考えたのだ。あー、まだ一日だけどさ、この家族好きになっちゃたみたい_____

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