漁火

美しい情景と狂気の心理が洗練された筆致で書かれた秀逸な幻想文学です。
読書とは文章を楽しむことでもあるとしみじみ思いました。
主人公の狂気に呑まれないようどうぞお気をつけて。

　夜毎にグロテスクな幻覚に苛まれ、酒に逃げるしかない男のとある一夜のお話。

　ホラー、あるいはホラー的な設定の人間ドラマです。たぶん。おすすめする際にどういう括りで説明したものかとても悩ましい作品。
　読み応え抜群でした。とてもよかった……このじわりと胸の奥に何かが灯るような読後感……。

　グロテスクな死体につきまとわれる主人公。もちろん死体が動いた喋ったりするはずもなく、なにより他の人には見えていないというのもあって、主人公はそれを幻覚であるとしてひたすら無視し続ける、という筋。
　つまり対話劇、どころかグロテスクな死体の独演会みたいになっているのですけれど、それがこれだけ読ませるばか…続きを読む

静かな海際の話、ひたすら綺麗です…。全部狂人の夢であったらそれはそれで滾るんですけど、多分違うんだろうなこれという。グロテスク描写にフェチを感じました、山本タカトの絵みたい。綺麗だ…。