第33話 愉快なアンデッド達 その4
Side ロリカズ
この村での依頼を終えた時、すでに日が落ちていた。もうすぐ夜になる。そこで僕達はこの村の宿屋に泊まることにした。そして、それぞれに必要なアイテムの購入や休息のため、一時パーティを解散することにした。
「少し月が赤く見える」
珍しく赤色に染まった満月の夜だった。おばちゃんの紹介でパーティに加わった竜也という人物、彼を見ていると、なぜか胸にざわめきが生じてしまう。
苛立ち、またそれとは違う何かが胸を締め付ける。ロゼットが言っていた。竜也は魅了のスキルを所持している可能性が高いと、女性に対して特に効果の高い魅了が発生するのだと。
すでに僕の幼馴染の一人が彼に魅了されかけていた。竜也に頭を撫でられる度に罵倒する彼女なのだが、彼女の瞳の中に小さなハートが浮き出ているそうだ。ロゼットはその事で、かなり竜也を警戒しているようだった。
旅先でも彼に纏わりついてくる女性が後を絶たなかった。なぜか彼は、その度に、いつも体を激しく震わせていた。何かを我慢するかのように。
それとは逆に小さな子供達には頭を撫でてあげたり、お菓子をあげたりなど変わった様子はなかった。
村のいく先々で女性関係の揉め事があとを立たなかった。今回はこの村の村長の娘までもが、竜也を追いかけて僕らのパーティに加わりたいと懇願してきたのだ。先ほどまでリーダーの僕が泣き叫ぶ村長をなだめていた所だ。
今回の事だけではないけど、僕たちのパーティの噂が、悪い方向に広まってきている。一度彼とは話をしないといけない。そう思って彼を探しているのだけど、見つからない。
本当はミリカという少女をパーティに加えたかった。彼女を見た瞬間、理由は分からないけど、どこかで出会った少女の面影を思い浮かべてしまう。恋とかではないけど、なつかしい、そんな感じの感情が溢れてくる。でもその少女の顔が、はっきりとは思い浮かばない。
「くっくっくっ、我は黒の騎士、全ての生ける者達よ、恐れ
僕は見てしまった。狂乱の黒の貴公子が荒ぶりながら、雄叫びをあげている姿を、そして僕……、私が忘れていた前世の記憶を思い出した。
☆☆☆
side ????
学園での授業が午前中に終わり、ある商店街のお店に私達は向かった。
「ただいま、みんな、先にあがってて」
「ちぃーす、あばちゃん、おじゃまします」
「おばさま、こんにちわです」
「こんにちは、あら、あんたたち、今日は早いんだね。そういえば最近、竜也くんを見ないね」
「え、竜也くん? って誰?」
「なに、言ってんだい。あんたが女子校に行ってからは、疎遠になったけど、小さい頃は、海外からやってきたって言う白いワンピースの女の子とあんたで、お兄ちゃん、お兄ちゃんって二人で、取り合いをして、べったりだったじゃない。今でも大好きだったんじゃないの。お兄ちゃんが来るのなら、早く言ってよ、こんな格好は見せられないって、おめかしして、言ってたじゃない」
「お母さんこそ、何言ってんの、そんな事言った覚えがないんだけど? 」
「そんなわけが、あれ、そういえば、そんな子いたような、いなかったような」
「母さん、もうぼけたの? ほんと大丈夫?」
「なにいってんだい、まだまだ健康そのものだよ」
「ちょっと背中を思いっきり叩かないでよ、もう、痛いんだから」
こうして、私の部屋で三人の女子高生が集まっていた。
ギャル風な容姿をした、ちびっ子と容姿端麗、特に胸がすごいクール系美少女、そして至って平凡な私とでチームを組んで、アマツカと呼ばれる企業が開発した新作スマホRPGをしていた。
アマツカで有名なのは、小説だった。人気絶頂の中、急遽完結してしまった。三英雄物語~チートを手にした俺はたくさんの嫁を手に入れました~や、ある森の中に祀られていた聖剣に選ばれた少年が、偶然森で彷徨う少女と出会い、数々の苦難の中、2人が結ばれて子供ができるのだけど、のちに少女は、天使として覚醒してしまう。
それから少女が天使と人間とのハーフだった事が判明する。人間と違って成長のスピードが著しく遅く、数年経ってもその容姿がほとんど変わらなかったこともあったせいだった。
そして、聖天使教会より、少女は聖女に選ばれてしまう。何事もなく家族三人、仲良く暮らしていたのだけど、この幸せの生活は、長くは続かなかった。
数年後、絶望を振りまく悪魔ダークナイトが復活してしまう。勇者と聖女の二人が命をかけてダークナイトを封印する。さらに数年後、彼らの娘が成長して、主人公になった物語が始まる予定だったのだけど、更新が何年も止まったままだった。
あと熱血サラリーマン慎二の成り上がりも、大学編が終わった瞬間、慎二がサラリーマンになる前に、俺たちの就職活動はこれからだって、意味不明の終わり方をしているし、最近のアマツカの異世界転移や転生系の物語は中途半端におわる作品がかなり増えている。ヤンキー転生なんて一話で完結しているし、小説は諦めてしまったのか、次はゲーム産業に進出したようだった。
「ちょっと、なにぼけっとしてんのよ」
「あ、わかったって」
さてと、ゲームにログインしないとね。
くじ引きして異世界旅行、俺の聖剣はヤンデレ聖属性だった。 眠れる森の猫 @nekoronda1256hiki
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