第30話 愉快なアンデッド達 その1

 アルフィの村に辿り着くと、大量のアンデットが、我先にと生けるものを見つけては襲いかかろうとしていた。村の住民達や冒険者、村の兵士達も防衛線をはって応戦しているが、アンデッドの数が尋常ではなかった。この村はもはや蹂躙されるのも時間の問題だった。


 なんだって、こんなにアンデッドの群れが現れたんだ?


『村の領主さんから、聞いた話によると、どうやら、この地域に住んでいるエルフの森から大量のアンデッドが出現したようです。知能が長けた魔物が現れたのかもしれません。その魔物は、エルフの森を焼き、アンデッドを発生させ、獣人族の村には竜巻の魔法を発生させて、かなりの損害を与えたようです。この村はエルフと獣人族とも親交が深い事もありますから、分断を狙っての作戦かもしれません』


 助けはほぼ期待できないと言うわけか。仕方ない。それにしても結構な数だな。めんどくさいが働くか。


「ミリカちゃん、村の人達を非難させてやってくれ」


「この数をおにぃさんだけでは」


「ああ、この程度なら余裕だ。大丈夫だ。任せてくれ」


「……おにぃさん」


 ミリカちゃんが、グラサンをかけてアロハにサンダル、聖剣を持った俺をしばし無言で見つめる。かっこいだろう? 


 あ、あの、その装備で本当に大丈夫でしょうかと、ミリカちゃんは納得しなさそう顔をしながら、そう呟いていたが、最後はコクリと頷いた。


「おにぃさん、絶対に、死なないで、もし、死んだりしたら、わ、わたしも、おにぃさんの後を追いますから? 」


「えっ? 」


 デジャブなのか、何度も復唱された言葉をこのミリカちゃんの口から出てきたのだが、俺に微笑んではいるが、目がものすごーく、真剣だった。どこかの戦国時代の城が落ちる寸前の中、夫ともに自害しようとする高潔な姫君に近い、そんな感じだった。俺は手に持つエスカーナを見てしまう。まさか、お前と同じ属性なのか。まぁとりあえずだ。


 俺は一人、大量にいるアンデッドの群れに駆け出し、突っ込んだ。ミリカちゃんも同時に村へと駆け出した。


「俺が相手だ、かかってこい? 」


 俺はアンデッド達の注意を引こうとしたのだが。


「おいおい、どこにいくんだ? 」


 獣型のアンデッド達は俺を見て、一瞬止まったが、すぐに無視して村人達の方へと進んでいく。ま、まさか、魔物だけでなく、アンデッドまでなのか。しかも、逃げるどころか無視だと? うん? なんだ、落ち込んでる俺に俺の肩を優しく叩いてくるアンデッドがいやがった。他にもドンマイとポーズを決めるアンデット達もいた。なかなか、こいつらフレンドリーな奴らじゃないか。アンデッドの中にも気のいい奴らがいるんだな。アンデッド達は、じゃあーね、と手を振ってまたまた、村人達の方へと向かって行った。ああ、なんだ、その頑張れ。……というか。


『えへへ、良かったですね。腐れ縁になれそうな友達が増えましたよ?』


「ま、まて、こらぁ!!今回はポーズなしだ、 『ホーリブレイク』!!」


 光の刃となったエスカーナを振り払うだけで数十体が消滅した。一応、この聖剣が光属性であることに違いない。光属性はアンデットの弱点だからな。聖剣の薙ぎ払った余波だけでも相当なダメージが入るだろう。そこら中にいる俺に無害で、お人よしなアンデッド達を次々と始末していく。消滅していくアンデッドの中にはグッドラックと言って親指を立てて消滅していくアンデッドまでもいやがった。

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