第29話 バトル? その2

 俺の朝の日課といえば、朝のラジオ体操から始まる。そしてジョギング。今日は太極拳でもするか。


 俺の身体が無意識に流水の如く流れるような動きを始めた。ナニをしたのかさっぱり分からんが、俺の行動一つ一つに分身したかのような残像が残っていた。


 ミリカちゃんは俺をじっと見ている。その動きを見て、ミリカちゃんはゴクリと唾を飲み込んだ。


「ふぅ、初めてにしてはすごいな。ここまでついてこれるなんて、どうしたんだ、ミリカちゃん」


「あの、おにぃさん、お、お願いがあります。もう一度、バトルを、今の格闘家としての、おにぃさんと、バトルして頂けませんか」


 バトル? 戦い? こちらの世界だと組み手のことなのか。


 俺達はバトルとやらを行うため村外れの人気がない場所に移動した。


「いいぞ、ミリカちゃん、さぁ、かかっておいで」

「はい、お願いします」


 俺とミリカちゃんのバトル? が始まった。


⭐︎⭐︎⭐︎


「たぁー!」


 ミリカちゃんの突きを躱す。


 そういえば、昨日はナニもできなかったな。実に悲しいことだ。性剣よ。なんだ、お前も悲しいのか。ああ、ほんと悲しいよな。おれの瞳が、ものすごーい悲しみに満ちた。


「あたたたたたたたたたーっ!」


 宿屋のくそばばぁがしてくる拳の連打の必殺拳か。いつも俺に向かってしやがるから、もうこれは慣れたな。ばばぁに比べたら、鋭さが全くないな。俺は流れるような動きで躱した。


「一つも当たらない、おにぃさんは、剛だけでなく、やはり柔の拳まで、ならこの奥義で、【カマキリ】!!」


 俺の股間に向けて青白く光った手刀がせまってきた。なんかえらい物騒な名前の技だな。俺じゃなかったら、タマとられてるんじゃないか。おお、性剣よ、どうした。


 馬鹿め、その程度の攻撃で、我は砕けぬ、折れぬ!朽ちぬ! だと?


 俺の性剣が、キラーンと輝いた。俺の実体はくうになり無の状態となった。無双の境地となったのだ。誰もこの俺を捕らえることができなくなったらしい? あらやる攻撃を全て避けてしまう無敵の状態になってしまったようだ。


「ま、まさか、その悲しみの瞳、おにぃさんは、伝説の格闘家タマナシンが極めたタマナシン拳究極奥義、無性転生むせいてんせいまで、継承者だったんですね、うっ、まいりました、おにぃさん」


 おいおい、なんだその、あタマのおかしそうな技と継承者とか、ミリカちゃんの攻撃を躱しているうちにミリカちゃんに勝ってしまったぞ。


⭐︎⭐︎⭐︎


「おにぃさん、今日はありがとうございました、また明日も、お願いいたします」


「ああ、また明日な、ってうゎあ!!」


 なぜか俺の手に聖剣エスカーナが現れた。朝の日課をするとちゃんと伝えておいたはずだ、大切な事だから、二度言ったはずなのに、なぜ現れた。


『竜也さんたいへんです。アンデットの群れが村に向かってきているようです』


 なんだと、炎上の次はバイオハザードなのか。


「おにぃさん、その武器は? 」


「ミリカちゃん、その話はあとだ。アンデットが村を襲おうとしているらしい、村にいそごう」


 なぜ、次から次へとこうなる。あの村にはきたばかりだと言うのに。可愛い女の子がどれぐらいいるのか、まだわからん。死なれたら最悪だぞ。


「はい、おにぃさん」


 俺とミリカちゃんはアルフィの村に駆け出した。




 

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