第19話 またまた追放

 いつもの宿屋に俺は帰ってきたぞ、マイルームは最高だな。今日からまた引きこもるぞ、ガハハハ!!


 俺はベッドの上に大の字になって寝ころんだ。宿屋のババアには、散々文句を言われたがな。


「たったの、半年で帰ってきたのかい。それに、なんだい、その遊び人の格好は? そういえばエスカーナちゃんはどうしたんだい、とうとう捨てられたのかい?」


 酷い言われようだ。俺の世界では歴とした正装なんだぞ。エスカーナに頼んで、どこぞの商会で購入してもらったオーダーメイド品だと言うのに。出来る男が着ればさらに格好良くなるはずなのだが。


 俺は宿屋のババアに素敵なステッキーを見せてやった。


「これがエスカーナだ、スーツと合わせていけてるだろう?」


 ババアの顔に困惑が見えた。右手を俺の肩にのせて、


「そうかい、分かってるよ、ステッキーに名前までつけて現実逃避しているのは、うんうん、しばらく休みな。ご苦労だったね、ミリカちゃんも今日から夏休みだからね。もうすぐこっちに遊びにくるそうだよ。ほんと忙しくなるね、それと捨てられたからって、ミリカちゃんに手を出すなんて馬鹿なマネはよすんだよ。半年前に成人したばかりでもまだ子供なんだからね」


 よくわからん事をいっているが、たっぷり休んでやろう。学園か、なつかしいな。学園祭はどうなったんだ。早く戻らないと浦島状態になるかもしれん。


⭐︎⭐︎⭐︎


 寝そべって天井を眺めながら俺は考えこんだ。


「俺はどこへ行っても追放される運命にあるようだ。村から追放、パーティからの追放、ふっ、俺は本当に罪作りな男だな」


 あいつらを利用して、A級の冒険者ライセンスを手に入れることができたのでよしとしよう。


 そういえば、先ほど廊下ですれ違ったミリカちゃんが今夜、エスカーナと話したい事があると言っていたな。まだ4時間ほど時間があるようだ。学園の制服もなかなか似合っていたな。半年見ないうちに可愛くなったものだ。


「お、おにぃさん、あのね、その、今夜、おねぇさんと話したい事があって、部屋に行っても、いいですか? 」


 ミリカちゃんから俺に話しかけてくるなんて、珍しいな。俺には一歩引いて、いつもおどおどして、エスカーナとはまるで姉妹のように仲良くしてるんだがな。たまに変なアイテムの話で盛り上がったりして楽しそうなんだよな。ほんと、うらやましくなんてないんだからな。あんな出来た子が俺の妹だったら、最高だったのにな。そんな子を熊野郎が襲おうとしていたなんて、やはり許せんな。


 俺が色々と考え込んでいる時、放置しておいたステッキ―が人化しはじめだした。そしてエスカーナが俺に話しかけてきた。


「たしかに竜也さんは罪作りな男ですよね、さっき連絡がありまして、地球の神様からも本日付けで地球からの追放が決定されましたよ、えへへ、頑張ったかいがありました。そうそう神様からのお便りが届いていますよ。見ますか?」


 いつもエロエロ迫ってくるこいつが、大人しいと思ったが、天界とコンタクトをとっていたのか、いやいや、追放って、


「おい、待て、どういうことだ?」


 エスカーナからその神様とやらの手紙を奪った。


 手紙には「天界ネットを使ってカミツベ動画の配信をみましゅた。ごめんなしゃい、せっかく地球から転移させた俺つえ、チートな地球人を野盗と勘違いして皆殺しにできるような凶悪な人間はこっちの地球に戻ってこられると大変こわいでしゅ、さらに英雄と呼ばれたチート転生者もあくびでもするかのように簡単に殺すなんて、しかもダークなアレはなんなんでしゅか、もうニンゲンやめてましぇんか? ほんと困りましゅ、こ、こっちには戻ってこないでくだしゃい。そ、それと、わ、わたしの大好きな熊ちゃんを狂喜のごとく笑いながら皆殺しにしたあの動画はある意味ホラーでしゅた」


「なんだこれは、動画ってどういうことだ?」


「じゃーん、見てください」


 エスカーナは胸の谷間からスマホのようなものを取り出した。ぽよんとエスカーナの胸がゆらいだ。アレが見せそうでみないのが、なんというか。お子様パーティではあんなことやこんなことができなかっただけにかなりたまっているようだ。いやいや、今はだ。

 

「見たいですか、見たいですよね、触りたいですよね。はい、どうぞ、優しく揉んでくださいね。でも激しくしてくれてもいいですよ。コリコリしちゃいますか?、それとも舐めますか、えへへ」


「胸はいい、それはあとだ。動画を見せろ」


「むぅ、わかりましたよ、さしぶりに今夜はたくさんできるんですから、今日はたっぷり愛してくださいよぉ、頼んでいた、とってもすごい薬の材料がそろったので、今夜が楽しみですね。それでは、じゃーん、はじまり、はじまり」


☆☆


「お前たちは、俺の敵だ。しねい!!」


「ぐぅまあああああああ!!」


「あ、あの、どうして?」


「だめだぞ。君みたいな可愛い子が、こんな、危険な森で遊ぶだなんて、このクマ野郎なんかと……、いたぞ、ごらぁ、まだ、生き残りがいやがるのか、しねい!!」


「ぐぅまあああああああ!!」


 熊か、俺の天敵だったやつだな。もうこの世界からは消えたがな、だが、生き残りがいるかもしれん。こんな有害指定動物を殺して何が悪いんだ。意味がわからん。


 ☆☆☆


「おい、そこの兄さん、それを見せてくれないか? 近づくと死ぬから、やめとけ、命が惜しくないのかって? あーん、何言ってんだ、殺すぞ、うぎゃあああああ、腕がああああ、腕があああああ」


「なになに、こんな眼鏡君にやられてんのかよ、まじそれ、聖剣じゃん、ラッキーってぎゃああああああ!!」


 あいつらは確かエスカの村からグランハルトに向かう途中にいた盗賊共だったな。エスカーナが暴走するから、近づくなと最初に警告してやったのに、馬鹿なやつらだ。珍しいアイテムを大量に持っていたから有名な盗賊団かと思っていたが転移者だったのか、俺まさか、ヤっちゃいましたかって奴か? そもそも闘いの先端を切ったのは俺ではなくエスカーナが最初なんだがな。レイプ魔は虐殺です♪ ってな感じで、虐殺聖剣モードになっていたのだが、まぁ、目の腐ったヤンキー共を皆殺しにしたからって、そもそも正当防衛だろが。なんでそれが理由で追放されなきゃならんのだ。


 くそっ、あきらめてなるものか、どこか戻れる、そんな抜け穴があるはずだ、絶対にあきらめないぞ。


「むむっ、まだこれでも、あきらめないんですね。もうこうなったら」






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