第17話 改造人間

 俺たちは、宿屋の並びにある酒場で食事をとることにした。二人で20Gになる。


「そろそろ違う狩場にでも行ってみるか。草原は広すぎてだめだ。こう魔物に逃げられては金にならんからな」


 すると、エスカーナはどこからか地図を取り出し、広げだした。


 もうあえては言わないが。


 地図には、グランハルト近郊の地形が記されていた。この大陸のことについては、俺は無知だ。エスカーナに頼るほかないだろう。


「そうですね。ダーク化した竜也さんを見ると弱い魔物が怯えて、逃げちゃいますから、それで、ダークセットを少し改造しちゃいました」


「まさか、眼鏡みたいにか、それができるなら、光の紋章なんて、つけなくても良かったんじゃないか」


「具体的に言うと、装備自体の改造は無理なので、竜也さんの身体を色々と改造しました」


「またって、おい、なんか、さりげなく恐ろしいこと言ってないか?」


「えへへ、でも、アレな竜也さんなら喜ぶと思いますよ」


「なんなんだ、それは?」


「それはですね、ダークセットを頭でイメージするだけで、装着、取り外しができるようにしておきました。私を呼ぶ時と同じような感じですね」


『来い、エスカーナ!』


 で、聖剣化するあれのことか、どこにいようが、逃げようが、手放そうが、聖剣エスカーナが手元に現れてしまう。恐ろしいことに、こいつは時と場所、関係なく俺の目の前に現れたりする。あの置き去り事件があったときからだ。この機能が備わったとき、ある意味、恐怖した。だが、今初めて知ったぞ。俺の身体が改造されていたことに、俺はいつ、改造手術を施されていたんだ。


「なるほど、たしかに便利だな、よし、なら……来い! むぐっ!!」


 俺がダークセットを呼ぼうとしたら、エスカーナに口を塞がれてしまった。


 な、なにをする!!


「だめですよ、こんな人が多いところで黒いの装着したら、たいへんな事になりますよ」


「そうだったな、つい、ヤっちゃいそうになった、変身は男のロマンだからな」


「気を付けてくださいよ」

 

 話を中断して地図をみることにした。


 街の門を抜けたあとに草原、あと、近くに森、それと山、少し離れたところにカーナの村とは違う村があった。


 これから、行く場所、道のり、敵の情報などを事前に調べておくのもよさそうだな。


「ここから近い村は、アルフィの村ですかね」


「そうだな」


 村か選択に入れておくか。


 俺は、黒の手帳を取り出し書き込んだ。


「アルフィの村周辺に、ダンジョンがありますから、お金を稼ぐにはいいかもしれませんね」


「ダンジョンか」


 完全にゲームの世界になっているな。俺はあまりゲームをしたことがないが、ダンジョンぐらいは分かるぞ。なにかと新しい発見があるかもしれないな。これも選択肢に加えておくか。


 さらに黒の手帳に書き込んだ。


「素材集めと善行値を上げるにはダンジョンは良い場所かと思いますよ」


「なるほど」


「でも今の竜也さんは悪行値というペナルティがありますから、たいへんかと思いますけど、でも、それはそれでいいですよね。元の世界に戻らなくていいですから」


「いやいや、だめだろが!!」


 話し込んでいる内に料理が運ばれてきた。


 エスカーナは野菜と果物がメイン、俺は肉なのだが、やはり元の世界の料理がなつかしくなる。まずくはないのだが、レトルト、特に、カップ麺がたまに恋しくなる。ああ、食べたいな。


「食べないんですか、竜也さん?」


「無性にラーメンが食べたくなった」


「……そうですか」


 あるわけないよな。この世界には……


 なんだ、ごそごそと……


 おい、おい、どういうことだ? エスカーナが、カップ麺やレトルトカレーなど、次々とテーブルの上に置いていくぞ。


「なんで、そんなに持ってるんだ?」


「言ってくれれば、良かったのに、これはですね。竜也さんの世界でアルバイトしていたとき、商店街のおばちゃん連中から、いっぱいもらったんです。面接で趣味と特技を聞かれたので、愛天使として、愛について語ったんです。不憫ふびんな娘だねとか、涙を流しながら、そうか、そうかと、なぜか同情されましたけど、頭が、どうとかで、可哀そうな境遇なんだねとか。そうそう、いつでも食べたかったら、言ってくださいね。まだまだいっぱいありますから」


 そして、部屋に戻ってからカップ麺を食べた。うまかった。だが、俺はあとになって気づいた。これの出てきた場所はどこからなんだ……?


⭐︎⭐︎⭐︎


「えへへ、実は胸の谷間にある❤の入れ墨から出してるんですよ? 見たいですか? だめですよぉ?」

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