第16話 お願いされたから作り替えたよ♪

「なっ!!何だあれは!!」

「騎士たちに連絡!!動物が2足歩行で向かって来る!!」

「あれが実験の結果なのか?たしか実験が成功したら1匹だけ残るんじゃなかったのか?」


「知るかそんな事!!それより急いで団長に連絡しろ!!相手は武器を持ってるんだぞ!!」


ヨクブーカの街はいま、混乱の渦中にあった。それは、街を上げて実験していた最強動物兵器育成計画を実行していた森から、動物の様な人が大勢出てきたからだ。


「状況は?」


「団長!森から人型の動物が出てきました!全員武装しています!!」


「ふむ・・・・。あれは結果の確認に赴いた第3部隊の者達の装備。と言う事はすでに部隊の連中は殺されたか。」


「なんと!!ではどうされます?」


「ふん!!殺されてしまったのなら放っておけ、それよりあれらは良い兵器になると思わんか?」


「そう言われれば・・・。確かに奴等が姿を現すだけでこれだけ混乱が起こるのです。相手に与える心理的効果は高そうですね。」


「後は戦闘力を測りたい。第5部隊の屑共を向かわせろ。」


「あの娼婦部隊をですか?もったいなくないですか?」


「すでに半分壊れている。それにケバーイ攻略がうまく行けば女等いくらでも調達出来る。何の問題も無い。」


「さすが団長!!では指示して来ます。」


「全員を出せよ。お楽しみも中断しろ。」


「了解です。」


走り去る兵士の後姿を見ながら、団長は迫りくる動物人間集団を見ていた。その口元は、動物人間が手に入った後の事を思って歪に歪んでいた。


一方、自分達が姿を現して街が騒がしくなっていると気が付いている動物人間達。しかも、耳の良い種族が団長達の会話を聞いて状況を確認していた。


「そうか、彼女達が出てくるか・・・・。思えば彼女達にもひどい仕打ちをしてしまったな・・・。もし断罪者様が彼女達も動物にして救って下さったら、今度は大事に守る事にしよう。」


「そうですね隊長。子供を産むのは男である自分達では出来ませんし、女性と子供は大事に守る事にしましょう。」


「うむ、所で断罪者様は?」


「我らの先頭を意気揚々と進んでおります。」


「きゅっ♪きゅっ♪きゅっ♪」


動物人間達の一番先頭では黒いのがまるでスキップをするかの様にピョンピョンと宙を跳ねながら進んでいた。


「街から人が出てきます。」


「彼女達です。しかし、罰を受けて改めてみるとこれは酷い・・・・。」


「そうだ、断罪者様に目を開いて貰わなければ彼女達の窮状に気が付かなかったのだ。これも我らの罪だ。」


街の扉から出てきたのは襤褸を纏い、錆びた剣を持った女性達だった。中にはお腹の大きくなった女性もおり、その眼は虚ろでウーウーとうめき声を上げている。体は体液と血、そして暴行の痕が見られ、立って歩いている者はまともな方で、這いずっている人まで居る。


「きゅ?きゅ~♪」


「お待ちください!!」


「きゅ?」


ゆっくりとこちらに向かって来る女性達。その様子に首を傾げながら見る黒いの。そして、黒いのは女性たちの上を通り過ぎて街に入ろうとした。動物人間達の番を用意するならもっと元気な方が良いと思ったからだ。だがそこに牛になった隊長が待ったを掛ける。


「罪深きわれらが断罪者様のお考えを遮ってしまい申し訳ありません。ですが、1つお願いを聞いていただけませんでしょうか?どうか、彼女達も救って下さいませんか。我らの所為でこうなってしまった彼女達にも、救いを与えては貰えませんでしょうか?どうかお願いいたします!!」


「きゅ?きゅ~~~~~~・・・・・。きゅっ♪」


「おぉっ!!ありがとうございます断罪者様!!」


女性達からはあまり嫌な気配も感じていなかったのでスルーしていた黒いの。だが牛の隊長が彼女たちを指さしながら頭を下げた事で黒いのは彼女達も自分達を同じ姿にして欲しいとお願いされていると思った。黒いのは了承の意味で頷いて返す。


黒いのの返事に感謝して再度頭を下げる牛隊長。女性達はと言えば、話の内容はあまり理解出来なかったが救いを与えるという言葉は理解出来た。自分達を道具の様に使った街の連中から助けてくれるという牛隊長を見る女性たちの目は、まるで救世主を見るような目になっていた。


「では断罪者様、お願いいたします。」


「きゅっ、ぐばぁっ!?」


「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」」」


ぽりぽり、しゃくしゃく、かりかり、「きゅっ?」、ボリボリ、ゴリゴリ、もちゃもちゃ、「きゅきゅっ♪」もしゃもしゃ、もごもご、もぐもぐ、ぷっ!!


騎士達を動物に変えた時より長い時間を掛けて黒いのは女性達を咀嚼し、吐き出した。吐き出された女性達は、隊長達と同じように、動物が2足歩行で立つような姿に変わっていた。幾分隊長達よりも毛並みが良い様に見える。


「あぁ・・・・・あぁぁぁぁぁ・・・。立てる!!私立てる!!」


「動かなかった腕が・・・腕が動くの・・・・。」


「体の傷も消えてる・・・・それに凄く調子がいいわ。」


「ふさふさの毛が生えてる。さわり心地がいいわ。」


「私、いつ生んだのかしら?あの街の糞の子供だから死んでも構わないと思っていたけど・・・・。こう見ると可愛いわ。」


「にゃ~。」


「おぉっ!!奇跡だ!!奇跡が起きた!!」


「これより女性達は私達で保護する!!各員女性達を陣形の中に!!」


「突然の事で驚かれているだろうが、あなた方はあちらにいらっしゃる断罪者様に助けて頂いたのだ。姿は動物になっているが、それは動物実験を行っていた我々に与えられる罰であり救済だ。すぐには理解できないだろうが落ち着いて我々の指示に従ってほしい。我等もあのお方に救済して頂いたのだ。」


「あれだけ傷付いた私達の体をこんな風にするなんて、あの方は神様の使いでは?」


「きっとそうよ。私達を助ける為に降臨されたんだわ。」


「動けない体よりも、今の体の方がありがたいに決まってるわ。それに、なんだかすごく体が軽いもの。」


「それじゃあこの子は神様の使いから洗礼を受けた初めての子供なの?それは大事に育てないといけないわね。」


「にゃ~ん。」


「きゅ~?きゅぅ~♡」


「にゃにゃ~ん。」


「まぁ!!使徒様がこの子に祝福をお与えになったわ!!」


「これはますます我等の行動が重要になったな。各員気合を入れろ!!巫女様を守るんだ!!」


「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」


女性達は姿が変わった事よりも、自分の体が動く事に、嫌悪していた状態が元通り以上になっていた事に感謝していた。そして牛隊長の話で黒いのを使徒様と呼び始める。


お腹の大きかった女性は何時の間にかお腹の膨らみが無くなり、赤ん坊をその手に抱いていた。赤ん坊はどう見ても子猫にしか見えず、そのクリクリとした大きな目が大変可愛らしかった。


赤ん坊の可愛らしさに♡を浮かべながら近づく黒いの。そして黒いのは鳴き声を上げながら赤ん坊おでこに頬を当ててスリスリした。擽ったそうに鳴き声を上げる赤ん坊。その様子を祝福だと、その祝福を受けた赤ん坊は巫女だと動物人間達は言い始め。厳重に隊列の奥で守る事になった。


「彼女達を助けて頂き感謝し致します。さぁどうぞ、あの街の罪深き者達に罰と救済をお与えください。」


「きゅっ?きゅっきゅっ!!」


陣形を組み直した牛隊長は、黒いのに街を指さしながら頭を下げる。その行為に黒いのは、まだまだ足りないから仲間を増やしてくれとお願いされたと勘違い。気合いを入れて街まで進み始めた。


一方、慌てたのは街で指揮を取っていた団長だった。まさか力を測る為に送り出した用済みが、元気に、しかも動物人間達と同じ姿になってこちらに向かって来る。相手の力量も分からずにただ取り込まれた状況に焦っているのだった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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