第15話 動物人間作っちゃった(∀`*ゞ)テヘッ

何やら騒がしい森に来てみれば、体の大きな動物が争い合っていた。その動物たちを全て食べ尽くした黒いのの元に、大勢の鎧を着た兵士達が姿を見せる。その兵士達は近くの街ヨクブーカに所属する兵士達だった。


黒いのを実験の成果だと呼んだ隊長が指輪を黒いのに向けても全く反応せず、困った隊長は傍に居た白衣の男に助けを求めるのだった。


「おかしいですねぇ・・・・。少し見せて頂いても?」


「あぁ。」


隊長が指輪を外して白衣の男に見せる。男はじっくりと指輪を観察しては首を傾げ、ひっくり返しては首を傾げていた。


「壊れてはいない様ですね・・・。」


「だったらなぜ言う事を聞かない?」


「それは街に戻って調べないと何とも・・・・・。」


「ではこの後はどうするのだ!」


「こちらの物ならどうでしょう?“痺れろ”。」


「きゅぴっ!?」


じっくりと時間を掛けて指輪を調べた白衣の男、だが不調は見つからなかった様だ。黒いのはその様子を見ながらプカプカと宙に浮き、お腹を休めていた。


焦る隊長が叫んだ所で白衣を着た男が懐から別の指輪を取り出す。隊長の指輪が金属だけで出来た物だとしたら、こちらの指輪には紫色の宝石がはめ込まれていた。


白衣の男が取り出した指輪を指に嵌めて黒いのに命令すると、はめ込まれた宝石が怪しく光った。指輪が光った時にお腹の中が少しピリッとした黒いのは、その事に驚いて変な声を出してしまう。その反応に白衣の男は効果が有ったと勘違いした。


「これなら大丈夫の様です。」


「ならば動きを止めて連れて行くぞ。早くせねば戦争開始に間に合わなくなる。」


「ひっひっひ、ケバーイの女は美女揃いだという話ですからな。もちろん戦勝の暁には私にも?」


「あぁ、分け前はくれてやる。さぁ戻るぞ。」


「“動くな”」


「ぎゅぅぅぅぅぅぅ。」


今度はお腹の中が石の様に固まってしまった。その事に不快感をあらわにする黒いの。だが隊長と白衣の男は黒いのが声を出しているという違和感に気が付かずに、背中を見せて街に戻ろうとしている。


そして、周りを囲んでいた兵士たちが黒いのを捕まえようとその手を伸ばしたその時、黒いのは不快感から体の口を開いた。


「ぐぅぅぅぅぅぅぅばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「ひぃっ!!」


「ばっ化け物だぁぁぁぁぁぁ!!」


「隊長!!長官!!化け物が動き出しました!!」


「なにっ!!」


「そんな馬鹿な!!」


体の口を開けて叫ぶ黒いの。その姿の変わりように恐怖を覚えて叫ぶ兵士達。一部の兵士は黒いのが動いた事を隊長と白衣の男(長官と呼ばれた者)に報告しているが。他の者達は恐怖で腰が抜け、へたり込むものまでいた。


「ぐぅばぁ!!」


バフンッ!!シャリシャリ、ポリポリ、グチャグチャ、ゴクン。


「ひぃぃぃぃぃっ!!逃げろーーー!!」


「くっ、食われるぞーーー!!」


「貴様ら逃げるな!!あいつを捕まえろ!!」


「“止まれ”あぁ駄目です!使役の指輪の効果が無い!!」


「ぐばぁっ!!」


「「あっ。」」


バフンッ


大口でどんどんと自分を取り囲む兵士を捕食していく黒いの。逃げようとする兵士も、空を飛ぶ黒いのからは逃げられない。途中、指輪をかざして黒いのに命令していた隊長と白衣の男も飲み込み、命令系統を失い烏合の衆となった兵士達は散り散りに逃げ出した。


だが黒いのはドワーフの所で覚えた嫌な気配の探し方を実践し、兵士達を1人残らず捕食してしまう。動物の鳴き声で騒がしかった森は人の悲鳴で騒がしくなり、そして最後には木々の騒めきと黒いのの咀嚼恩しか聞こえない静かな森になった。


シャリシャリ、ポリポリ、グチャグチャ、モグモグ、ぷーっ!!


しばらく咀嚼していた黒いのは、口の中で何かを混ぜ合わせる様に動かすと中の物を吐き出した。


「ぐぅ。一体何が・・・・。」


「たっ隊長。そのお姿は・・・・。」


「長官なのか?なぜそのような姿に?」


「きゅっ♪きゅっ♪きゅっ♪」


吐き出された兵士たちの姿は一変していた。どうやら黒いのは体の口がドワーフ達に行った事を練習したようだ。


隊長と呼ばれた男の顔は牛になっていた。体も2m程に高くなり、鎧が内からはじけ飛んでいる。その肉体は筋肉と茶色い毛に包まれ、まるで牛人間だ。尻の部分からは細い尻尾が突き出している。


長官と呼ばれた男も、頭から黄色く大きな耳が生え、目が意図の様に細くなり鼻が細く伸びている。体も黄色い毛に覆われて狐人間になっていた。こちらの尻尾はふさふさだ。


他の兵士達も、犬人間、猫人間、羊人間、蛇人間、熊人間、とバリエーション豊かに姿が変わっていた。黒いのが森で食べた動物たちの姿に変えられた兵士たちは、自身の変化に呆然となる。


そして、笑っている黒いのの姿を見た時に、自然と涙を流し始めた。特に長官と呼ばれた男は号泣だ。そして、滝の様な涙を流しながら長官は黒いのの前で祈りの体制を取る。


「あぁ、あなたは神が遣わした断罪者なのですね。私達が行った命を弄ぶ研究。その罰をお与えに降臨なされた・・・。」


「では我々が動物の命を軽んじて実験に使ったがゆえに、動物の姿になったこれが罰だと言う事なのか・・・・。」


傍に居た隊長が自分の体を再度確認し、その体が森に放った牛の物であると感じた隊長は長官と同じように黒いのに対して祈りの体制を取る。


「人でもなく、動物でも無いこの姿で、実験に使った者達の苦悩を知れと言われるのか・・・。」


「なんという、恐ろしい罰なのだ。人が動物と混じるとは・・・。」


「だがこれは救済でもあるのではないか?罰を与えられたと言う事は許しも得られたのではないか?」


「きゅっ。」


「「「「「「「「「「おぉっ!!」」」」」」」」」」


「だから協力していた俺達も姿が変えられちまったんだなぁ。」


「どの動物が残るか賭けもしていたもんなぁ・・・・。今思えば罪深い事だよ。」


「「「「「「「「命を弄んだ事!!ここに深く謝罪いたします!!」」」」」」」


「きゅっ。」


呆然と自分達の姿を見ていた兵士達が、隊長と長官の言葉に納得する。そして、黒いのに向かって一斉に祈りを捧げ謝罪の言葉を口にした。


頭を下げる事が御願い事だとドワーフの件で覚えた黒いのは、何をお願いされたか分からないが了承する事にした。


頷く黒いのに、信奉者の瞳を向ける兵士達。そろそろ黒いのが洗脳してるんじゃないかと思ってしまうが。黒いのは唯、捕食した物の悪意を喰らいつくしているだけなので洗脳ではない。けっして洗脳ではない。(大事な事なので2回言った。)


「きゅ~♪」


上機嫌に兵士たちが来た方向に飛んでいく黒いの。恐らくこの人達のお願いはドワーフと一緒で番が欲しいのだと思っているのだ。


雄ばかりが変わってしまったから困っているんだね♪


そう言いながら番の準備をする為にヨクブーカの街を目指して移動を始めた黒いの。その姿を見守りながら、動物人間に変わった兵士達は街に向かう黒いのの目的を邪推する。


「あぁ、あの方が街に居る罪深き者に罰を与えに行かれるぞ。」


「我等もお供しよう。」


「あぁ、あの街にはまだ実験用の動物も居る。解放しなければ。」


「我等と同じ罪人に、救済の罰を!!」


「「「「「「「「「救済の罰を!!」」」」」」」」」


もちろん黒いのにそんな気持ちは微塵も無い。だが街に漂う嫌な気配の掃除と、兵士達の番を用意して欲しいという(勝手に黒いのがそう思っている。)願いを叶える事に加えて、かつて時計塔を見たように面白い物が無いかなぁと観光気分で向かっているだけだ。


だがそんな事を知る由もない兵士達は、黒いのに与えられた罰(だと勝手に思っている。)の姿で動物達を助ける為に動き出すのだった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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