第10話 使徒様の偉業と交流ですわ。

私達の反応を気にした様子も無く、ゴブリナのリーダーは私の前にとことこと歩いてきました。そして、胸元にある使徒様のお守りをじっと見ています。


「きゅあ?」


「知っていますの?」


「きゅあきゅあ♪」


「まぁ!!会った事が御有りなのですね?」


「きゅーあ♪」


お守りを指さしてこちらに向かって首を傾げるゴブリナさん。私は使徒様の事を知っているのかと聞くと頷いて返してくれましたわ。そしてゴブリンを指さした後に口を大きく開けて、吐き出すしぐさをした後に自分達を指さしましたわ。


「ゴブリンを食べる。吐き出す。自分達?」


「きゅあきゅあ。」


私の言葉を聞いて、ゴブリナさんはお守りを指さします。


「使徒様ですの?」


「きゅあ。」


「あぁ、なるほど!!貴方達は使徒様に作り替えて貰った方々なのですね!!」


「きゅあ♪」


私がオークに襲われた時、襲っていたオークはピーグ(私命名)になりましたわ。つまりこのゴブリナさん達も使徒様に救って頂いた仲間でしたのね!!


「皆様!ゴブリナさん達は私達の仲間ですわ!!使徒様の洗礼を受けたゴブリンですのよ!!」


「ゴブリナ?それがこの種族の名前か?」


「ゴブリンが洗礼を受けたらこうなるのか・・・。まぁ性別は変わってるよな?」


「でも性欲はさらに上がってるぞ?」


「あのテクニックはもしや使徒様が・・・・。」


「つまり使徒様はとてもお上手なのですか?」


「「「「「「キャーッ!!」」」」」」


「ゴブリンを襲うゴブリナ・・・なぁ、これって協力して貰えばゴブリンに怯えなくて済むんじゃないか?」


「でも生まれてくる子がゴブリンかもしれんぞ?」


「きゅあ?きゅ~あ。」


私の言葉に信者たちが色々と話し合いを始めましたわ。すると先ほどのゴブリナのリーダーがお腹をさすりながら自分達を指さしていますわ。そして森に手を振りました。


「きゅあ?」

「ばぶ?」


「「「「「「「「「「「可愛い・・・・・。」」」」」」」」」」


森から出てきたのはゴブリナの赤ん坊を抱えた少女でしたわ。こんな体でも生めるのですわね・・・。さすが魔物ですわ。


ぷくぷくとした薄ピンクの赤ん坊は人とあまり見分けは尽きませんわね。ですがぷっくりとしたその姿は保護欲をとても擽りますわ。そして続々と赤ん坊を抱いたゴブリナが森から出てきますが、その赤ん坊は全て女の子でした。


「貴方達からはゴブリナしか生まれないのですか?」


「きゅあっ。」


「なるほど、では交配相手はゴブリンのみですか?」


「きゅ~あ。きゅあ?」


「いえ、私は結構です。」


横に居たゼバスがリーダーに色々と聞いていますわね。私と言えばゴブリナの赤ちゃんを抱かせて頂いていましたわ。あっ!いま指をきゅっと握りましたわ!!可愛いですわぁ~♪ほっぺもプニプニ♪


「お嬢様、ゴブリナ様方を街に送ってもよろしいでしょうか?」


「大丈夫なんですの?この見た目ですし、悪漢に襲われる心配は?」


「幸いここは街からそれほど離れていません。信者の一部と一緒に私が向かい、状況を説明します。ゴブリンから人々を守る使徒様の洗礼を受けた魔物と言えば、おそらく保護して貰えるかと。」


「ですがこの方たちは納得していますの?」


「はい、ゴブリンの居場所を教える事が条件ですが承諾して頂けました。」


「きゅあきゅあ♪」


「それならいいのですが・・・・。あなたはいつの間にゴブリナさん達と意思疎通が取れる様になったんですの?」


「表情と鳴き声から判断しています。」


「きゅ~あ~♡」


「すみません、私まだ干からびたく無いので・・・。」


「目を付けられたんですのね・・・。」


ゼバスの腕を取るゴブリナのリーダーさん。そのお腹が先ほどよりも少し大きくなっている様な・・・。確かゴブリンに襲われれば3カ月で子供を産むという話でしたわね。ゴブリナさん達も同じくらいなのでしょうか?でしたら3カ月後にはゴブリナさんが倍以上に増える事に・・・・。


「食事は少なくても良いそうです。ただ、他社の精を得られないのはかなり負担になる様でして・・・。」


「そこら辺はどう考えていますの?」


「ゴブリナさん達には絞り切らずに、適度に摂取して頂こうかと。我が街は使徒様によって浄化されましたが、外からくる者達は違います。もし信者に害を及ぼした場合。」


「それが男性だったらゴブリナさん達の出番と言うわけですわね?」


「その通りです。」


残念な事ですが、使徒様を信奉されていない方々は人を騙すのが当たり前です。人に親切にされても、後で泥を掛けられるのが今の世の中ですわ。


「もし、使徒様のお守りを断固として受け入れない場合は実行なさい。」


「はっ!人以外でも問題は無いようですので、オーク等も襲わせようと考えています。」


「それは・・・別の意味で心配ですが?」


オークのアレはその・・・大きいですわよ?


「すでに何匹か襲ったみたいでして・・・。」


「きゅあ♪」


「なら問題は無い・・・・のかしら?」


本人たちが大丈夫というのですから大丈夫なのでしょう。と言う事でゼバスには一度ピュリファイの街に戻って貰い、ゴブリナさん達の保護をお願いしました。


私達はというと、しばらく森や平原を周りゴブリナさん達を探しましたわ。ライヒもゴブリナさん達の言葉が解るようになっていたので、街へ来てもらえるように説得して貰いましたの。男性ばかりがゴブリナさん達の言葉が解るのはずるいですわ。


「勘弁して下さいよお嬢。意思疎通を間違えばミイラですぜ?こっちは命懸けなんでさぁ。」


ゴブリナさん達を街に案内していた信者とゼバスが1日も掛からずに戻って来て、巡礼の旅は再開ですわ。ゴブリナの方々の何人かが一緒に来て下さるそうで、お守りを渡しておきました。


「さぁ!湖に行きますわよ!!」


途中、私が襲われていた平原を通りかかりましたが、そこは何とものどかな空気が漂う場所になっていましたわ。ピーグたちがプヒプヒと泣きながら草を食べ、地面に寝転がり昼寝をしていました。時折襲って来るゴブリンやオークは全員で体当たりをして追い返していましたわね。あの体は見た目より固いみたいですわ。あとはまぁ、ゴブリンとオークを見つけたゴブリナさん達が喜々として・・・。これ以上は淑女として言えませんわ。


そんなこんなで湖に到着したのは街を出てから3カ月経った頃でしたわ。目の前にはとても澄んだ水を湛えた湖が見えますの。


「綺麗ですわねぇ。」


「お嬢様、現実から目を逸らさないで下さい。」


「はい力を入れて!!ひっひっふーよ!!」


「きゅあ、きゅあ、きゅー!!」


そうです、ゴブリナさん達の出産周期はゴブリンに犯された女性と一緒でした。つまり湖に到着した時点で、一緒に着いて来てくれたゴブリナさん達の出産ラッシュが始まったのです。まさか急にお腹が大きくなるなんてだれも思いませんもの。


私達は湖でゴブリナさんが生んだ子供が動けるようになるまで足止めをすることになりましたわ。1カ月の足止めでしたが色々な事が解りました。


「湖の底に沈んでいる結晶は使徒様が作った物でしたわね。」


「湖の浄化と、あのフロッグ達も作り替えられた方々でしたね。」


「カエルと意思疎通できるとは思いませんでしたわ・・・。」


「フロッグですよお嬢様。それに彼らが子守唄を歌ってくれたおかげで夜泣きに悩まされずに済みました。」


「最初の頃は大変でしたものねぇ・・・。」


子供を産んだゴブリナさん達が自分達はここに残るから先に行けと言って下さいました。ですが今まで一緒に旅してきた仲間を、しかも子供を抱えている状態で放っておけないと巡礼者の女性陣が猛反発。1人で動けるようになるまで3週間という驚異的な速さだと言うので全員でお世話をしていたのです。


そこで問題になったのは夜泣き。夜になると誰かの赤ちゃんが泣き始め、つられた他の赤ちゃんも泣いてしまうのです。その対応に追われる私達の前に現れたのがカエルさん達でした。彼らはとてもきれいな鳴き声で大合唱を行い、赤ん坊を寝かし付けてくれたのですわ。


そこから交流が始まり、使徒様がここに来た事も解りました。向かった先も恐らく山の方だとフロッグさん達が鳴き声で教えてくれましたわ。


「さぁ、準備も整いましたし使徒様を追いますわよ!!」


待っていてください使徒様!!いまヤクアが行きますわよ!!」


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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