第2話 ボス戦

 鉄の剣の1000ポイントでさえ、サソリを200匹は討伐しないといけない。1時間に10匹でも20時間はかかるのである。


 それが現金で2万程で買えるなら、どうだろうか?学生でも早く上がりたいやつは買うし、社会人なら、それほどの時間を費やすくらいなら、バサッと買ってくれるだろう。時給1000円の仕事になるんだ。それをどう判断するか各々の判断である。


 早くやればやるほど、1時間あたりのポイント採取率は上昇するから、採算は取れやすくなるんだ。単純にこれを金額に直すと60万の現金にすることが出来る。たった2日でこれだけ稼げるのだ。ダンジョンは知恵次第でいくらでも稼げるだろう。


 僕は2万ポイントを消費して、装備を整えた。プラチナメイルと、プラチナの剣だ。これで攻撃力と防御力は格段に上がっている。もはや砂漠の雑魚モンスターなどでは僕の相手にはならないだろう。


 時間も時間だし、ボスのいる場所に向かって行った。その情報は入口にいる猫耳のミリィから既に情報を得ている。僕はダッシュで向かって行った。今の素人の冒険者ではおそらくは倒せないが、それでも、ダメージをそこそこ与えているはずである。それを回復させるのは勿体ないのだ。


 どうやら、腕試しがてら、今日来た学生たちが20~40人くらいで徒党を組んで討伐しようとしている。えっ、武器は?もちろん木の棒と学生服。うん、あいつら、バカなのか説明書読んでないだろ。学生服が破れたら、現実世界でも破れたままになるというのに。


 ボスはピラミッドの守護神であるスフィンクスだ。かなりの巨体であり、ゾウよりもおおきい。それに対し学生たちは複数方向からの一斉攻撃である。何も考えずただ数の暴力で押す作戦は愚行としか言えない。


 でもその愚行な特攻のおかげで、僕はスフィンクスの攻撃パターンを確認することが出来た。


 前足による爪での攻撃、踏みつぶし、そして回転による砂嵐の発生、尻尾による後方の広範囲攻撃。


 その1撃、1撃が初心者装備の冒険者には一撃必殺のものだった。あえなく、40人もいた人員がのこりわずか3名となっている。これでは戦局的に無理と判断したのか、逃げようとしている。


 それをスフィンクスはじゃれるように追いかけて一匹ずつ仕留めている。最後には、口から炎を出して、消滅させていた。


 学生たちがいた痕跡はなにもなくなっていた。死亡したため、ダンジョン入口に転送されたんだろう。しかも、どれも悲痛な叫びをあげての消滅だった。あれは正直自分では勘弁してほしいと思う。だれだって、ゲームの中でさえそこまでの苦痛に苛まれたくはないんだ。

 

 そのために、僕は武器と防具を今準備できるもので最高クラスまで用意した。これなら、一撃死はないだろう。そして、生物である以上かならず弱点は存在する。それをつけば、僕の勝ちだ。


 最後の人が追われている時に、僕はこっそりとスフィンクスの後ろを追いかけていたのだ。

初手の奇襲で最大限の効果を上げておきたい。ボスは、残り一人だと思っているから、最後の攻撃で必ず油断するはずなんだ。


 そして、スフィンクスが炎を吐いたときに僕は実行に移した。想定通り大技の炎を使っている。どうも一旦止まらないと、吐けないようだ。この機を僕は逃さない。


 鍵縄を使い、尻尾の付け根に引っ掻けスピードと振り子の原理で尻尾の根元までジャンプした。ボスが異変に気付いたようで、後ろを振り向こうとするが炎を吐いているためそれも出来ない。


 他の行動もどうやら出来なくなるようだ。その機を逃さずに僕はプラチナソードで尻尾を一閃した。このダンジョンのモンスターはどこぞのモンスターを狩るゲームのように、体力値以外にも部位破壊が可能である。


 その攻撃でスパッと尻尾を切り落とすことができた。うん、この1階のダンジョンならこれで十分いけるようだ。攻撃も効くなら、防御もそれなりに期待できる。


 スフィンクスは炎が吐き終って硬直が解けたようだ、痛みで身体が震えている。僕を落とそうと後ろ足だけでジャンプしている。


『ドスン』『ドスン』


落とされまいとして、剣をスフィンクスの尾てい骨に突き刺した。


『ギャイーーーー』


 あまりの痛みにスフィンクスが鳴き声を上げる。また、身体が小刻みに揺れる。僕は落とされまいと必死に剣にシガミ着く。だが、思ったより剣の切れ味が鋭すぎるようだ。


 小刻みにスフィンクスが揺れるたびに傷口が上下に広がっていく。このままでは、タイミングを計れずに、剣が外れて振り落とされてしまう。


 そんなことになれば、あの太くて重いスフィンクスの足の下敷きである。防御力がいくらあろうとも、体重の壁は乗り越えれれない。踏みつけられれば、身動きが取れなくなって、嬲り殺されてしまう。


 そんなのはごめんこうむる。小刻みに揺れる振動にタイミングを合わせ、両足をスフィンクスの尻にドロップキックをかました。その反動でプラチナソードを引っこ抜き、ムーンサルトばりに一回転しながら、剣を振り回す。名付けて、円月回転切り。


 大事な部分を切られたためか、『ギャイーーーー』っとまたもやスフィンクスが雄たけびを上げる。僕は急いで、スフィンクスから距離を取った。さっきは不意打ちで攻撃出来たが、スピードもがたいのでかさもあっちの方が上である。


 僕はスフィンクスがこっちを振り向こうとしているときに、リュックの中からある風船玉を取り出した。そして、スフィンクスがこっちを向き再び雄たけびを上げようと、大きく口を開けた隙をついて、その風船玉を口の中に放り投げた。


 あとは、スフィンクスの斜線状から逃げるため、横に走って逃げた。


「ぐしゃっ」


 どうやら風船玉を口の中で割ったようだ。比較的に柔らかい材質のものを使っているから、少し牙にあたったり、ちょっと唾液で溶けたりするだけで、すぐに中身が出てくる。僕特性の中身がね。


「プンギョ~~~~」


 おかしな鳴き声をするスフィンクスである。よっぽど、風船玉に入れた特性の唐辛子の粉末と、ワサビの粉、そして、お酢を混ぜて、ゼラチンで固形化したものが口にあったらしい。


 あまりの嬉しさか口を開け乍ら炎を吐き、砂地の上を転げまわっている。症状で言うと、混乱みたいなものかな。あの巨体がジタバタしているので、迂闊に近寄れない。離れて、また、スフィンクスの後方に回っていった。


 さてはて残りのボスの体力はいかがなものかな?ゲームなら体力バーが合ってそれを見ながら削れたりするんだけど、うん、どのくらい削れているかがサッパリわからないね。仕方ない、チマチマ削っていきますか、まずは機動力を奪って、相手の攻撃を封殺していく。


 僕は、スフィンクスがジタバタするのを収まった瞬間を狙って、後ろ足の一本目がけて駆けだした。まだこちらには相手は気付いていない。このまま足を削りきる。


 まずは左後方の足の健をプラチナソードで切る。うん、骨までは切れないがスフィンクスの筋肉くらいなら、すっぱりと切り裂ける。


 スフィンクスは『グァ~~ゴ~~』と叫び声を上げ、4本の脚のうち1本が使い物にならなくなり、重たい自重を支えることが出来なくなって、地面につっぷした。


 チャンスである。このまま一気に押し込むそう思ったときに、ソウルデバイスからカーテンコールが鳴り始めた。


『皆さま本日は真にご来店ありがとうございます。まもなく、当店は閉店します。21時50分になりましたら、強制的にダンジョン入口の受付ホールまで転移します。忘れ物、ドロップの取得、モンスターの討伐、転移ポインの登録などやり忘れたものがお急ぎ下さい。当店はまもなく閉店します。。。。。』


 どうやら、ダンジョンマート金沢支店のカーテンコールが鳴り始めたようだ。昨日の初日になったのは、21時30分だったから。もうあと20分程しかない。僕は、音がならないように設定することも出来たが、時間がわからない方が損失だと考え、設定していなかった。


 でも、正直助かった。もう少し、前に鳴っていたら、位置がボスに気取られて倒せないとこだったよ。でも、もうスフィンクスは後ろ足をやられて満足に動けないし、位置がばれたとしてもさほど問題もないだろう。僕は、最後の止めのために駆けだした。


 スフィンクスの前方からの攻撃ではまだ、動く前足の攻撃やスフィンクスの炎による攻撃が残っているため、危険すぎる。後方の後ろ足から、順に体力を削っていくことにした。


 少なくとも残り10分以内に倒さないとボスを仮に倒せたとしても、ドロップを拾う事も出来ずに強制転移させられてしまう。


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