白霧之参 静かな剣②
「とりあえず、構えてみな。そしてお前の覚悟ができたら打ち込んでこい」
そう言われてバルナバスは、先ずは両手で
次にそのまま前に進み始め、あと2メートルほどまで間合いを詰めたところで大きく木剣を振り上げた。その速度は持ち主の意思に反して実に遅い。
「お前、
「まだ、まだまだ! よろしくお願いします!」
バルナバスは上手に受け身がとれたのか、すぐに立ち上がり叫ぶ様は実に勇壮だが、ジルケは既に
「ああ、こいつは想像以上に
「……え?」
憧れの剣士から言われた言葉に、彼は動揺を隠せない。
その間、ジルケはバルナバスの胸中とは反対に軽い足取りで別の
「ほれ、今度はそれで素振りをしてみな」
「……え? え?」
「早くしな! また地面に転がりたいのかい!?」
「は、はい! すぐやります!」
「今からこいつの使い方を教えてやるから、復唱してすぐに実践するんだ。いいね?」
「は、はい!」
想定していなかった授業の予告に、バルナバスは慌てて
「まずツヴァイヘンダーはとても重い。だから、横に振り回すのが基本だ。上から大きく振り下ろすなど、余程、訓練を積んだ者じゃなければ、すぐに疲れ果てるだろうさ」
「はい! ツヴァイヘンダーはとても重い! 横に振り回す! 上からは振り下ろさない!」
「うん、そうだ。そこで基本的な構え方は、
「はい! 脇構えと
「大体そんな感じだ。じゃあ、実際に見せてやる」
ジルケは先ず右足を引いて半身になり、リカッソを右手で、左手で
その動作の後、
「早速やってみな」
「はい! ……おわぁ!」
バルナバスは元気よく返事をして、己の目に焼き付けた彼女の動きを再現しようと試みるが、体を
彼はすかさず立ち上がりざまにジルケを見るが、彼女は変わらず、地面に突き立てた
ジルケの動きをなぞり、真似て、学ぶ。2回目は1回目と
そして4回目。始める前に、何か閃いたという顔をしていたのだが、果たしてそれはすぐに実を結んだ。しっかりと地に足が着いた動きと、ひゅんという小さく鋭い風切り音。それは切り返す時計回りの横薙ぎでも同様だった。
「上出来だ。なかなか
ジルケは、コツを掴んだであろう若者の動作に、うん、と短く
「はい!
「言ってみな」
「はい! 最後まで振り抜くと背後への牽制にもなりますし、右手を最後まで回さずに途中で止めれば、突きに変化させることも可能だと思います」
「お前は模倣も工夫も大したもんだ。
「ありがたいお話ですが、私はジルケ様の弟子になりたいのです。働きたいのではありません」
「弟子は取らないって言っただろう? 私の言ってる意味が分からないのかい?」
「あ! わ、分かりました! 喜んで!」
――再び世界は渦の中で崩壊した。
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