異管対報告第2号-9
入間基地にある防空指揮所の要撃管制官や空軍参謀、将官達は画面に映るAPOLLO・15の加速と魔獣を無視して海ほたるパーキングエリアへと硬度を落としつつ向かう姿に絶句した。
それは、倒すべき魔獣を前にして過剰な距離を取ろうとすることでもなく、一歩が報告した内容があまりにも突拍子もないことだったからである。
「戦闘機が特装砲だと……?」
「デモニック……」
「バスター……?」
「何だそのネーミング?」
日本軍にとって特装砲というものは主にレールガンを表す。それは台湾紛争にて東側へ侵攻を開始した中国海軍空母艦隊を撃滅するため自衛隊が使用したのが世界初の運用であった。その威力は超遠距離から空母の側面を貫通し、周囲の艦の上部構造物さえも軒並み破壊した程である。
しかし、このレールガンは廃艦寸前の「きり型護衛艦」をニコイチで繫ぎ合わせ2つのガスタービンエンジンによってようやく航行と発射が両立出来る。それは現代において技術的進歩や魔法技術導入でもあまり改善されておらず、レールガンを搭載するにはそれに特化した艦や地上施設を造らなければならない大型装備なのだ。
だからこそ、攻撃機程度の大きさのAPOLLO・15が特装砲を撃つという報告を上げることがその場の隊員達にはそのヘンテコな名前を含めて理解できないのだった。
たった1人、貞元を除いて。
「おい、一歩!お前ら何を言っている!これまでの訓練で何度となく失敗してるだろ!」
[だからといって何もしないわけにはいかないでしょ!]
「お前たちが下手に撃って落っこちたらどうするつもりだ!陸地も遠い海の上だぞ!」
貞元はマイクを握りしめ画面の向こう側で海面付近を高速飛行する一歩へと怒鳴りかけた。それはレールガンとは比較にならないレベルで威力のあるデモニック・バスターを出来る限り秘匿していたいことや失敗続きの発射に対する危機感などあらゆる負の感情からである。彼は怒りを手のマイクにのみ集中させると、声音だねは士官としての威厳をもった語気にて一歩達を引き留めようとした。
しかし、貞元の発言は現場の一歩達にとって悠長以外の何物でもなく、彼の言葉へ反論しつつAPOLLO・15は加速を止めなかったのである。
部下の暴走は貞元の拳へと更に力を込めさせた。
[やれます。今の俺達ならできます]
「命令だ、港3尉。ようやく第1護衛隊群の出動報告が来た。今すぐ戦闘を遅滞戦に切り替えろ。今すぐだ!」
そんな貞元の怒りも知らず一歩は己の意志を彼に叩きつけた。それは明らかな希望的観測であり、遂に貞元は彼らの甘い考えに怒りを声音に乗せてしまうのだった。
そして、その怒声に帰ってくる言葉はなかった。
「港、答えろ!港!答えろ、港ぉお!」
ただ、スピーカーは沈黙を流し、貞元の怒りも慌ただしく動き出す空軍隊員たちによって消えていったのだった。
「こうなりゃヤケだ。上手くいきゃあの時みたいにフォローして、しくじりゃ捨てるだけだ」
だからこそ、貞元の最後の言葉もすぐそばの士長以外は誰も聞いておらず、再び全員の視線は戦場へと集中したのである。
「いいか、サブリナ。残燃料からしてデモニック・バスターを撃てるのは1回きりだ。外しても相殺されても終わりだ」
「わっ……わかっとる!」
戦場へと片足を突っ込みつつある東京湾の洋上は慌ただしく、話を聞きつけたマスコミのヘリコプターや海上保安庁の小型艇があちこちから魔獣を遠巻きに観察していた。特にテレビの取材ヘリは魔獣が自分達に見向きもしないことへ味をしめると異様に魔獣へと接近を始め、一番の映像を得ようとディレクターやリポーターは大声を張って解説し始めたのである。
その傍らで流れる管制官達の警告無線を無視して。
その魔獣へ群がるヘリコプターや警告から遠ざかり始めた海保の艦艇をレーダーサイトに眺めながら、一歩はサブリナへと発破をかける。それに応じる彼女だったが、既に緊張し始めたサブリナは僅かに口籠りつつ一歩へと吠えたのだった。
「変に力を入れなくていい。訓練通りにやれば撃てることは撃てるんだ」
「それは励ましじゃない!」
「そうだな。励ましじゃなく発破をかけてる」
そんなサブリナの声に、一歩は何度目か解らない冷静な口調て彼女へと話しかけた。その内容は直ぐにサブリナを怒鳴らせるものの、一歩の返答に彼女は黙って手を握り震わせたのである。
沈黙するサブリナの視線は前方と海面を行ったり来たりを繰り返し、一歩はその行動に溜息を必至に飲み込んだ。
「デモニック・バスターの照準と発射だけは俺じゃなくお前の管轄だ。他の火器と違って俺じゃなくお前が撃つんだ。だから、準備もあれこれするから、引き金はお前が引け。後ろの街も人も、守ってみせろ」
一歩の冷静な本音と発破はサブリナに前を向かせた。彼女の握った拳は開いており、何度か手首を振るとその両腕を前へと突き出した。
更に加速する2人は、海面を飛ぶ流星となった。
「安く言いやがって……」
「一蓮托生だぞ?」
2人の覚悟はチグハグなれどようやく収まるところに収まり、APOLLO・15はデモニック・バスターの発射準備にかかったのである。
「出力は?」
「20%でいく」
「25だ!」
APOLLO・15の装備する特装砲デモニック・バスターは一歩がサブリナへと説明したように通常装備とは異なる運用形態となっている。通常火器ではサブリナがAPOLLO・15の体を使って発射体勢をとり、一歩がシーカーやセンサー、レーダーサイトや照準器を用いて狙いを定めて発射や着弾までの誘導を行う。
だが、デモニック・バスターではサブリナが照準や発射のタイミングを担当し、一歩は発射のための管制を担当するのである。
だからこそ、一度サブリナが駄々をこねると一歩は言いくるめない限りそれに従うしかなく、彼は使用するエネルギー量を25%に設定したのだった。
「ガチぃ?」
「ガチ!」
それでも不安がる一歩が昔はやった悪魔のVtuberの真似をしつつサブリナへ尋ねかけるも、彼女は容赦なく語気を荒く即答したのである。
「わかった、Energy Line On!Power 25%!《エネルギー回路起動!出力25%》」
「Check!」
「Check」
サブリナに応じて設定していたエネルギーを回路へと流し込む一歩は、彼女へと尋ねかけた。APOLLO・15の体の制御や感覚はサブリナが主導権を持っており、彼女は嗚咽や悪寒、興奮の熱気のように感覚的にエネルギーの流れを感じられるのである。
なにより、サブリナの胸元に熱を感じるのと同時にAPOLLO・15の胸の装甲板の隙間から青白い光が僅かに漏れ始め、彼女は一歩と手順通りに確認作業を始めた。
「Chamber Open,Acceleration 40,Pressure Value 50《薬室開放、加速率40、収束率50》」
「Check!」
「Check」
APOLLO・15の胸元の光はゆっくりと喉元へ進み、一歩の確認が終わる頃に光は長い首は咽頭で輝いている。
エネルギーの流れが正常に喉の薬室へと流れていることをサブリナと一歩が確認をすると、2人はようやく海ほたるパーキングエリア周辺へと到着した。
そこには未だ避難しようとする車両やそれを誘導する警察の車両が屯して渋滞を起こし、避難は完了していなかった。それどころか、サービスエリアの展望デッキには買い食い片手に迫る魔獣を見物しようと多くの人集りが出来ている程である。中にはスマートフォンを自撮り棒を使って撮影を始める投稿者や、"避難誘導と逆走する"テレビカメラさえいた。
「Energy Chamber In.Bolt Down.2th Safety Out!《エネルギー、薬室内装点。装填よし。第2安全装備解除!》」
「Check!」
「Check」
その海ほたるの状況と魔獣周辺を飛び回るマスコミヘリコプターを前に無い歯を歯軋りさせる一歩は、デッキの上や辺りの避難状況を見渡し肩を震わせるサブリナへと手順確認を促したのである。
一歩からすれば避難勧告を無視して留まる市民やマスコミは邪魔以外の何者でもなく、"死なれても仕方ない"と割り切るだけであった。何より、危機迫る中で既に選択肢が無い以上、彼に"命知らずな市民"を気にかける程の猶予はなかった。
だからこそ、APOLLO・15の咽頭部分が回転するように明滅するのをサブリナも確認すると、2人はパーキングエリアを背にするように尻尾のターボファンエンジンを垂直に立て器用にホバリングした。
その様子は直ぐ逃げない市民達のファインダーに捉えられるも、もうサブリナも一歩と同じく眼の前の魔獣にのみ意識を向けた。もう2人にはお互いが生き残ることと魔獣を倒すことしかないのである。
「Acceleration Ring,Pressure Ring On《加速リング、収束リング起動》」
「Check……」
「Check」
咽頭の薬室に収められたエネルギーは銃の銃身に当たる部分で加速収束される。その為のリング状の機関が喉から口までの節々で白く光ると、APOLLO・15はようやくデモニック・バスターの発射最終体勢に入った。
「ファ……1th Safety……Out……」
サブリナは報告と共に口を開くと目の保養のための瞬膜とバイザーの点検のために改めて開いて閉じた。その防護レンズが青白く光るとAPOLLO・15の喉の奥で食道部分の下側が大きく迫り上がり、新しいエネルギーの通り道ができた。そのエネルギー道は加速収束リングの光で既に輝いており、口の中は白い光が溢れていたのである。
「そうだ。それでいい」
たどたどしいサブリナの報告だとしても、無数の邪魔を前にして作業を焦らず続ける彼女の姿に一歩は胸を撫で下ろしつつ彼女を励ました。
そんな一歩の一言にサブリナは肩肘を改めて張ると、遥か先からゆっくりと迫る魔獣の黒い影を睨み付けた。
「Demonic・Buster Ready!《デモニック・バスター用意よし!》」
「Roger!」
未だ逃げない周りの喧騒を払う一歩の言葉に、サブリナは雄叫びで答えた。
魔獣は戦闘においては既に目と鼻の先である。直線で自分達へ迫り大きな障害物もないこの状況を逃すわけにはいかない。
「この速度なら外すことはない。いいか、気張れよ!」
「それはこっちのセリフだ!一歩、お前がへこたれたら、一瞬でうちらは海水浴だ!」
「わかってる!だから必死に力んでる!」
だからこそ、サブリナは照準器の中心点と射線の軸合わせを急いだ。
「カマせ、サブリナ!」
「Final Safety Out!《最終安全装備解除!》」
そして、サブリナの視界に全てが整った瞬間、一歩が叫び、彼女は大きく首を後ろに降った。両腕さえも勢いに任せ横から後ろへ大きく振りかぶるその動きはまるで本当にヒーローの必殺技なのである。
だが、その瞬間に魔獣の影で動きがあった。
「なっ!頭だとぉ!」
「構うな、やれ!」
上下が逆回転するヒトデのようなからは上下で割れると、その隙間から首長竜のような首と頭が現れた。その頭は顎が星のように5つあり、その顎に合わせて目が10個ある偉業な頭であった。
突然の頭の登場に面食らった2人だったが、開いた顎の奥が紫に光り始めるとサブリナは慌てて叫んだ。そんな彼女に一歩が励ますように声を張ると、彼女は一層肩に力を入れた。
「必殺技だぞ、お前も叫べ!」
「何をいきなり……」
「気合を入れるんだろ!早くしろ!」
「馬鹿か!」
「そうだ!」
2人はその瞬間に身構える。
「ちっ……デモニックぅ!」
一歩の雄叫びに応えるようにサブリナは両腕を振りかぶりながら上体を前のめりにしホバリングの推力を前方へ向けた。
そして、砲門である頭が魔獣を捉え、煌めく閃光が空を揺らした。
「バスタァァアァアあァぁぁアぁあああぁぁあ!」
サブリナの雄叫びはAPOLLO・15を通し赤、青、黄色が入り混じる七色の輝きとなって空を焼き、海を焦がした。スパークするプラスとマイナスのエネルギーは加速収束されても抑えきれず、光の濁流から無数に漏れ出し激しい雷鳴と共に辺りを駆け抜けた。更には溢れ出した熱量はAPOLLO・15の背後数百メートルまでいたり、海ほたるの外壁は熱を帯び、金属部分は赤熱し始める程である。手すりを掴んでいた市民は湯気と共に焦げる手に驚き倒れ、肌さえ焼き焦がしそうなその熱さと光に彼等はようやく自分達が危険な戦場にいることを自覚した。
自撮り棒やスマートフォンが高熱によって異常を起こし初めてようやく逃げ出した市民達を撮影する取材ヘリも、有象無象も構わず焼き払う光線にようやく回避行動を取り始め、空中接触しそうな急旋回と共に離れていった。
デモニック・バスターは真っ直ぐ魔獣へ駆け抜けた。
だが、魔獣も咆哮と共に紫の光線を放つとデモニック・バスターと真っ向からぶつかった。
「ゔぇっ、耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ!」
「ああ嗚呼アアアあああああアァああああアアああアあああ!」
魔獣の光線とデモニック・バスターはお互いの熱量や推力をぶつけ合った。そのエネルギーは高温の破片となって辺りに散らばり、光線同士の摩擦にエネルギーが再び溜まると溢れてスパークを起こす。その爆発が更に辺へ破片をばら撒き、光線同士の交点周辺は空気が真っ赤に燃え上がり、海が激しくうねり蒸発するほどである。
その光線のぶつかり合いの中で照射を維持しようと一歩は体液と共に体から抜けてゆく意識を必死に腹の底へ力を込めて繋ぎ止めようとした。それでも襲いかかる眠気のような脱力は凄まじく、彼は大声で喚いた。
サブリナも一歩と同様にデモニック・バスターによって猛烈な負担を強いられていた。予想を超える熱量はAPOLLO・15の口の中を焦がし、その痛みは彼女の狙いや照射の維持を乱そうとする。そこに加えて猛烈な反動が襲かかり、サブリナは推力と踏ん張りだけで姿勢を維持しなければならなかった。それは万力に挟まれるのと同じであり、彼女は痛みを和らげようと雄叫びを上げた。
デモニック・バスターは再び勢いを増すと、魔獣の光線を砕くように先へと進み始めた。まるで花弁のように裂ける紫の光が海や空へと消えてゆく中、魔獣はそれでも光線を押し返そうと首を何度も捻りながら出力を上げた。
そして、七色の光線は遂に魔獣の光線を飲み込むと、長い首もろともに魔獣を呑み込んだ。頭ごと胴体を貫通したデモニック・バスターはそのまま数キロ先の洋上まで突き進み、自然拡散するまで直線上の全てを焼き焦がした。それは魔獣も同じであり、光線が突き抜ける胴体は構成する水分や物質が熱膨張や化学反応を起こしあちこちが膨らみ、トドメには全体が風船のように膨れ上がった。
最後に背中の結晶がひび割れ砕け散る頃には膨らんだ体組織が破裂し爆炎を吹き出しながら、魔獣は東京湾を目前に大爆破を起こしたのだった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「やった……か?」
燃え上がる海と体を押しのける爆風、立ち上る黒煙を前にして、一歩は喉奥からこみ上げる苦く酸っぱい感覚を押し込んで大きく息をした。それと同時にサブリナもようやく体の痛みから開放され口の中で暴れまわる激痛を堪えながら魔獣の居たあとを見つめて呟いた。
その爆発後は凄まじく、白波が荒れ狂う光景が光線の威力を物語っている。
しかし、黒煙の中に空気の乱れが現れると、何と魔獣の甲殻の先端が姿を表したのだった。
「まっ、まだ動くのか!一歩!」
「さっ……流石に……これ以上は……」
「根性出さんかい!」
だが、デモニック・バスターを撃ったAPOLLO・15は胸元ではアラームが鳴り響き、やせ我慢するサブリナのどやしに一歩が呻く状態である。つまり、2人はこれ以上戦闘するにはガタガタ過ぎるコンディションなのである。
「ん?」
「あっ?」
そして、2人は黒煙から出てくる魔獣に身構えるも直ぐに言葉を失った。
出てきた魔獣だったものは下側の甲殻しかなく、上側の甲殻が失われ赤黒い内蔵か体の外に飛び出していたのである。しかも大半の臓器は既に黒く焦げ上がり、生の状態の臓器が1つもない。
つまり、魔獣は完璧に絶命し、爆発の余波で流れてきただけであった。
「ばっ、爆発……した……か?」
「みたいだな」
その魔獣の殻も勢いを失うとゆっくり海面に消えてゆき、しばらくすると軽い殻の破片や肉片が浮かび上がってきた。
魔獣の血と爆発で赤黒く染まる洋上で、一歩とサブリナは勝利したのである。
「勝利の……」
「ウルトラV!」
掠れる声で掲げるVサインは太陽に輝き、震える手足はそれでも格好をつけようとする根性を見せていたのだった。
「勝ったか……」
「良かったですね、3佐」
「良くはない。何事でも批判したがるのが日本の文化だ。アメリカみたいに勝っても喜ばれない。勝とうが負けようが国民に非難され石を投げられる」
そのAPOLLO・15の光景に、空軍の全員が唖然として立ち尽くし、驚きに腰を抜かしたものは席に座り込んだ。魔獣を一撃で葬り去る程の火器は彼等の知識では核兵器しかなく、それより遥かに小さく害もないAPOLLO・15のデモニック・バスターは理解の範疇外でしかないのである。
勝利しながらにまるで葬式のように静かで重苦しい空気の中、貞元は重い顎を下げて呟いた。その蚊の鳴くような声に防空式所の誰かが彼へ声を掛けるも、貞元は感情なく答えた。
それだけ、APOLLO・15の勝利には余計な代償がついたのである。
その勝利を汚すこの国の愚かさに、貞元は心底呆れて肩を落とした。
「一歩、初陣で大物倒したぞ!これは大きな戦果だ、他の連中とも比べられん大戦果!強いぞ、カッコいいぞ!これなら世界中を敵に回しても勝てる!」
「そうか……」
防空式所が暗くなる一方、少しずつ回復してきたサブリナは自身の戦果を前にして上空で小躍りした。これまでのデモニック・バスターの訓練が悲惨な結果ばかりであったこともあり、その反動が一気に来たのである。言葉は明るく裏返る程であり、宙返りを何度となくするほどである。
一方、一歩は軽く返事をするもその声は震え、エンジンは咳き込むように推力が弱くなり始めた。
「なんだ、やけに元気が……」
そして、サブリナはようやく気付いたのである。
「もう……むり……」
「何言って……あっ!」
激しく鳴り響く警告アラーム同様に、一歩は限界を超えていた。
「めっ、MAYDAY MAYDAY!不時着する!燃料が無くて一歩も限界だぁあ!どこか降ろしてくれぇ!」
「海ほたるに……垂直……」
「着陸だな、やってやるとも!いいか、降りるぞ!降りるからな!」
手足をジタバタさせながら慌ててサブリナは海ほたるへと進路を変えると、一歩の消えゆく声に従い急いで高速道路を滑走路に見立てた着陸体勢に入ろうとしたのである。
だが、焦れば焦る程に動きは荒くなり、サブリナが叫べば叫ぶほどに体は左右に揺れる。速度の落ちたAPOLLO・15はフラップを全開にしても失速状態となっていた。
つまり、2人は墜落まっしぐらなのだ。
「ぴっ……ぴえん……」
「こんな沖で海水浴はいやぁぁあ!」
こうして初陣と共に初戦果を大型魔獣撃破で飾った2人は、溺死覚悟の海水浴を避けるためにアスファルトと鉄筋コンクリートの中へ飛び込み、"パーキングエリアへドリフト駐機"という大惨事を起こしたのだった。
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