第6話 頼むから添い寝当番なんて決めないで下さい……。
「第三十五回、三姉妹会議を開催します」
アヤ姉の宣言で小さな拍手が起きる。俺は会場(俺の部屋)の様子をベッドの上から薄目を開けてコッソリと伺っていた。
なんだか覗き見しているようで、うしろめたい気もするが、そもそも俺の部屋で開催する方が悪い。
「じゃあ、さっそくユキくんの添い寝当番を決めたいんだけど、どうしようか〜? あっ、こういうのはどうかなぁ? 月火にエリカちゃんが添い寝して、水木にヒナちゃん。で、私が金土日」
(えっ? もしかして俺ってば毎日誰かに添い寝される感じ……? 休みないの? しかも、アヤ姉だけ週三だし……)
「ちょっと待って。それだとアヤお姉ちゃんだけ一日多いよ? おかしくない?」
すかさずヒナにそう指摘され、アヤ姉が自分の間違いに気づいたようにハッとした表情を見せている。
まったく、おっちょこちょいなアヤ姉だ。
「考えてみれば、たしかに〜。じゃあ、私は金土だけにしましょ〜。日曜日は添い寝なしで。それなら週二日ずつで平等だよね?」
良かった……。これなら週一はマトモに寝れる。……って、全然良くねぇよ。
「まぁ、それならヒナも納得——」
「ヒナ、騙されちゃダメよ。アヤ姉は今まるで譲歩した、みたいな言い方をしてたけど、実際は全然違うわ」
エリカがヒナの言葉を遮る。このままあっさりと決まるのかと思ったが、どうやら、そう簡単にはいかない様子。
「ど、どういうこと? ヒナわかんない」
「簡単な話よ。ヒナは金曜日の夜ってどんな気分?」
「え〜とぉ、明日が休みだから……っ!」
「そう。皆ウキウキしてるの。金土は誰もが機嫌いいの! つまり、ユキの機嫌も良いはずから、寝ている私たちを抱きしめてくれたり……その、例えば、キ、キ、キスとかしてくれる可能性が大幅に上がるのよ!」
エリカは俺を何だと思ってるんだ? いくら機嫌が良くても俺がそんなことする訳ないだろうが。
「……あらら、バレちゃいましたか〜。流石はエリカちゃん」
「まっ! これくらいの推理、朝飯前よ。私もアヤ姉と同じ策……ゲフンっ、ゲフンっ。何でもないわ」
アヤ姉がガックリと肩を落とし、それを見たエリカが勝ち誇っていたが、今の感じだと、エリカもアヤ姉と同じ作戦を思いついてたのか?
「でね、この私に妙案があるんだけど——」
「あっ! じゃあ、じゃあ、日替わりにするのっ! それなら完全に平等だよ!」
今度はエリカの言葉をヒナが遮り、名案が思いついたとばかりに立ち上がる。
だが、立ち上がるほどの名案じゃない。最初に思いつくレベルだ。
「……ヒナには悪いけど、それには大きな欠点があるわ。それだと一大イベントであるクリスマスイブと年越しに添い寝する人が一緒になっちゃうの。どう考えても不公平よ。まぁ、この件に関しては、曜日制でも同じことが起こるけどね。ちなみに、今年のクリスマスイブは土曜日よ」
「あー、そっかー。じゃあダメかー。いい案だと思ったんだけどなぁ」
エリカの奴、曜日まわりまで把握していやがる。さては、添い寝当番を決める会議が行われることを見越していやがったな……。
「……こほんっ。で、私の案なんだけど、じゃんけん制はどう? 毎日じゃんけんで添い寝当番を決めるなら、完全に平等でしょ?」
会議を見越していたはずなのに、エリカの案は思いのほか雑だった。
(エリカがこの会議を見越して準備していた、だなんて俺の考え過ぎだったのか?)
……とは思わない。なぜなら——。
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