第27話 セレネとの生活

セレネが来てから1ヶ月が経った。

劇場の見学、日用品の買い出し、日々の生活。

まずは中央都市の生活に慣れてもらいたかったのだ。

私もセレネと一緒に過ごした、両親からもそうしろと言われたし、私自身一緒にいたかったから。

そんなある夜、部屋に2人でいるとセレネが正座でこちらに向き直り、

「アルテス、ボクはそろそろ働きたいです」

まじめな顔でそう言ってきた。

「うん、きっとセレネはそう言うと思ってた」

私がそう言うとセレネは大きく頷いた。

「申し訳なくて、アルテスとご両親には気にしなくていいって言われてはいるけど、ここは日本人的な発想になるのかもしれないけど」

「久々に日本人って聞いたよ」

2人して笑いあう。

「セレネのことも話そうか、このタイミングで」

「そうだね、全く知らない人なら気にしないけど、アルテスの両親だし、隠してても私が辛いから」

その夜、家族会議を開いてもらうよう両親に伝えた。


夜ごはんを食べ終わって一息ついた後、飲み物をテーブルに用意して4人で座り、セレネが暮らしていた地方都市での生活、そして生い立ちを含め王族の一人だと話をした。

地方都市にいたときの手紙でもセレネのことは伝えたが『ミレさんが知り合いから紹介された女の子で身寄りがなく、尚且つ私が占って貰った出会うべき女の子だった』と、あとは歌と踊りが抜群にうまい、ぐらいしか話していなかった。

王族の話はミレさんにも相談はしていたが「頃合いでいいと思いますよ」ぐらいの回答しか貰っていなかった中で1か月が経ち、セレネも生活をさせて貰っているのに諸々隠すのことに罪悪感が出ているので話すことにした。

勿論、最大級の隠し事は転生、これはまだ話すことが出来ないだろう。


一通り話が終わったところで。

「お、王族」

ははー、と父が畏れ多い感じをだす。

「ちょっと、冗談でも辞めてあげて、そんなことされても笑えないんだから」

「そうだよな、ミーネの時も怒られたっけ」

その言葉で思い出した、こう見えて母はエルフ族の大貴族の一員、ミレさん同様にどうしてここにいるのか、父とどうやって結婚したのか。

いやいや、今はそれじゃない、それはまた今度聞こう。

「私たちはセレネちゃんがどんな生い立ちだろうと関係ないわよ」

そう言った母の笑顔が眩しかった。

セレネはそれを聞いて、泣きだしてしまった。

そして泣きながらも地方都市でも誰にも言えず、中央都市に来てからも王族のお膝元と言うこともあり、落ち着かなかったと。

もう今更探してはいないだろうが、いつ見つかって、連れ戻されるか不安だったと。

そして王族だと両親に伝えたら追い出されるのではないか、私がいるからそれはないと思っていても環境が一気に変わったこともあり、少しの不安が徐々に大きくなり、今日に至ったと。

「セレネがいいならずっとここにいてほしいと思ってるよ」

父がセレネに伝える。

私は泣いているセレネの背中を撫でながら、両親2人とも男前だな、としみじみと感じた。

そして私もセレネと一緒にいたい、そう思うと私は立ち上がり。

「セレネと一緒にもう一度劇団で働かせてほしいです、一度抜けてしまったけどもう一度みんなの信頼を得たい。そしてセレネと舞台に、ううん、それ以上にセレネを、セレネの歌をみんなに届けたいです」

そう言うと両親はお互いの顔を見合い。

「2人で舞台に立つのはもう決まってるよ?ミレさんが計画しているからね」

「聞いていないの?ってこれは言っていいんだっけ??」

馬車の中でのミレさんがフラッシュバックする、デビュー計画、あれから何も言ってこないから消えた話だと思ってたのに。

私とセレネが顔を見合わせて

「「聞いてません」」

と返すのが精一杯だった。

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