第26話 帰宅

中央都市についた私たちは手続きで半日ほど時間を取られたあと一路、我が家に向う。

きっと怒ってるか、心配してるんだろうなぁ。

ミレさんもこれから来るだろう嵐がわかっているかのように静かになっていた。

セレネも元王族と言うことで王族管轄の街並みをしんみりと見ているようだ。


「ただいまー」

家の扉を開けて声をかけると奥からバタバタと音が聞こえた。

「アァァルテェェェス!おかえりぃぃーーー!」

父だ。

「もう離さないんだから、絶対だからね」

母だ。

2人に抱きしめられている私を見て、ミレさんとセレネは苦笑している。

両親はこの期間に子離れが出来ない身体になってしまったのかもしれない。


「初めまして、セレネと言います!しばらくご厄介になりますが、宜しくお願いします!」

ぺこりと音が出そうなお辞儀をするセレネ。

さて、反応はどうか、両親を見てみる。

「か、かわいい。もう一人天使が」

父だ。

「手紙に書いてあったけど、私たちが親になってもいいのよね」

母だ。

両親の反応がまずい、結果的に1週間程度いなかっただけなのにこの状態。

なんだか心ここにあらず、ふわふわしている。

セレネも「え、えぇぇっと」とか言いながらチラチラこっちを見てくるので、セレネの手を掴むと。

「長旅で疲れてるから少し部屋で休むね、あとはミレさん宜しく」

そう言って自室のある2階に向かおうとすると両親の動きが止まる。

「ミレ、さん?伯父が、ミレとさんの間に合った伯父が抜けていないかなぁぁ?」

父だ。

「伯父様、距離が縮まりすぎている気がしますわ。手紙にも伯父様とは仲良くって、え、どうゆうこと、説明を、伯父様」

母だ。

ミレさんを見るといいから早くいけとアイコンタクトをしてくれた。

何だかその行為も火に油な気がした、と言うかそのアイコンタクトに気づいた母が冷気を纏ってミレさんに近づいているのが見えた。

そこのところはセレネを連れて部屋に入ることで見なかったことにした。


「ふー、行く前より酷くなってるわ」

「あはは、ご両親??」

「うん」

「ボクは、なんかいいなぁって思ったよ」

セレネは両親がいることはいるけど、この大陸の王様とお后様。

会うことはもうないだろうし、この世界で普通の家庭を肌で感じたことがないんだ。

「そうだね、両親には感謝しかない。ここまで私を育ててくれて、私のわがままも通してくれた」

「わがままって旅のこと?都市から出るって大変だった?」

「うん、手続きはかなり大変だったよ。あとは公演も途中だったしね。だから旅に出るって許可を貰うのが一番大変だったかな」

「それでも行かせてくれたんだね。そして改めて、私を迎えに来てくれて本当にありがとう」

セレネは私の手を取って涙目でお礼を言ってきた。

サラサラとした髪の毛、ウルウルとした瞳で上目づかい、温かくも柔らかい手の感触。

あ、やば、鼻血出る。

ドガン!

「うひゃ」

「な、なにっ?」

階下で爆発音がしたので2人して驚いて廊下に出る。

プスプスと頭から煙を出している母を抱え、父が放心状態でいる。

ミレさんはため息をつきながら、2人に手を向けている。

2階のこちらに気づいて見上げると笑顔で。

「頭を温めてあげましたよ」

あー、さっき冷えてたからね。

よく見ると衝撃音の割に家財道具は一切傷ついてない、流石歴戦の冒険者だ。

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