第25話 転生者って何するんだろう

今日にも中央都市に着くだろうという旅程の中で、

「さて、最終日の今日はちょっと2人とお話がしたいです」

馬車の中、自身の鞄から三角錐の道具を出しながらミレさんが話しかけてきた。

数日前、転生者と打ち明ける際にも出したもので、ミレさんの説明で盗聴防止の魔道具だと私たちは知っている。

「わかりました」

「はい」

それだけに私たち2人は大切な話だと、背筋を伸ばす。

「セレネさん、私たちが転生者というのはお伝えしたと思いますが今まで他に転生者の話を聞いたことがありますか?」

「いえ、王城にいた時も地方都市に移ってからも聞いたことはありませんでした」

「そうですね、私も今まで聞いたことがありません。アルテス、私のことはセレネに話してくれましたか?」

「はい、以前聞いた話は大まかに伝えました」

ミレさんからは地方都市から出発する際に自分の話をそれとなく説明しておいてほしいと言われたのでセレネにはテントで話していた。

理由を尋ねたけどアルテスから話した方がいいと、それだけだったがたぶん話題の一つとして提供してくれたんだろう。

「ありがとう。私は今年で181になります、前世では考えられない年です。そしてその私でも今まで転生者と会ったことはありませんし、歴史や噂ですら聞いたことがありませんでした」

私たちは頷く。

「ただ、今この場にいる3人は転生者だ。私がいて、その親族であるアルテス、一緒に転生したセレネさん、小説のように数奇な運命の巡りあわせ、と一言では済ますことができません。何かしら意味があると私は感じています」

私とセレネは顔を見合わせる。

「そこで私はアルテスが神に言われたことを思い出しました。前世で好きだったことを流行らせてほしい。私が会った神はそんなことを言っていませんでした、人柄に問題がありそうでしたが『好きに生きて、好きな女作ってやりたいだけやれ』と要約するとそれだけです」

セレネが手を挙げる。

「ボクは、とにかく楽しく生活してほしい、と言われました。」

ミレさんが頷く。

「アルテス、貴女だけが神に依頼されているのです。貴女が前世で好きだったことを教えてください」

ミレさんに真顔で言われたが、うむむ、セレネの前で恥ずかしいけど話すか。

「キラッキラのアイドルヲタクでした、あとラノベを読むのも書くのも趣味で、それ以上に何よりかわいい子を見るのが最上の趣味、あ、それとおばあちゃんの影響で宝〇や劇団四〇を見たりとかも」

ミレさんは目を大きくする。

「それだ!」

「うわぁ」

「ひゃ」

ミレさんの大声に2人して驚いてしまう。

セレネは驚き方も可愛い、ひゃって。

「芸術の分野に特化した趣味、前世で好きだったことを流行らせるという神の言葉、歌と踊りが得意なんてレベルじゃない転生者、そして何よりこの世界に芸術がないこと、それを考えると我々のやらなければいけないことが自ずと見えてきます」

2人してごくりと喉を鳴らす。

「私も前世を思い出してロミオとジュリエットに似せた本なんかを出しましたが、それ以上の知識を持った子が現れました。」

恥ずかしくなり、私は頬を掻く。

「そして先日、歌で感動を巻き起こした子が隣にいる」

セレネを見ると同じように照れている、かわいい。

パンと音がしたのでミレさんを見ると胸の前で手のひらを合わせている。

「2人をデビューさせましょう!」

私とセレネは驚きを通り越して、呆気に取られている中、ミレさんはとても幸せそうに夢、いや計画になるのかな、それを話していた。

まぁ、まだ先の話だろうけど、私もセレネの歌はみんなに聞かせたい。

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