第17話 何にしても説明するのは難しいって話

地図を見る大人2人。

その光景を見る高校生2人。

外は夕方から夜に変わる頃、西日がビルの影を伸ばす。

あたかもその影の線が何かを表すように見えてしまう、そんな影だった。

「暫定ですがとりあえず対象が2か所わかりました」

「うむ、仮とするには弱くない根拠がある、五芒星と土地の力」

「えぇ、ちなみにどちらからとかわかりますか?」

「そうだね、逆位置の五芒星の頂点、歌舞伎町から時計回りに動いているのをみると順番はそのままだとおもう」

「そうなると次の場所は」

そう言いながら隆は地図上に指を置き、なぞるように次の点に向かう。

「ワセダ大学」

「まじかよ、うちの高校のすぐ近くだ。線引くのに夢中で地図見てなかった」

リュウジが地図を指差す。

「最後はもっとひどいぞ」

「え、病院なんですか」

カノが地図を見ながら驚きの声をあげる。

「そう、トウキョウ女子医科大学病院」

「大学も病院も避難とかできないのかよ」

「したいのはヤマヤマですが現状だと難しいです」

「なぜですか?」

「まず、この爆破事件の特殊性です。現状を上層部に説明しても理解はできないと思います」

「そうだね、我々が特殊だと自覚があるからこそ、理解ができるというものだろう」

「えぇ、そうなると上層部に諸々を説明して納得してもらうまでの時間が圧倒的に足りない。それが出来たとしても大学と病院を避難させるのに今度はそちらに出向いて説明をしなくてはならないですから」

カップに口をつけ、飲もうとするが思ったより熱かったのか、冷まそうと息を吹きかけていたコースケがため息をつきながら呟く。

「無理だろうなぁ」

「そういえばコースケ君、あれから声はどうですか?」

「ん?あいつの声は全く何も聞こえないよ、女の子の声も」

「あの少女の声になるんでしょうか」

「どうなんだろうな、実際はじじいの声で喋ってるし、何とも言えないけど」

カノが話に入る。

「でも、あの口元の動きは本当です、ネコが聞いたのも女の子の悲鳴だったんでしょ?」

「う、そうなんだけど、アイツに殺されかけてるんだぜ。助けてってのはなぁ」

「コースケ、お前の気持ちもわかるがあの少女のことは再考が必要だ」

「そうですね、操られている可能性は捨てきれません」

「く、みんなして、俺だってカノのことは信じてるからなぁ、うーん」

カノをチラチラと見ながらコースケは背伸びをするように両手を伸ばす。

「あ、コースケ!」

「え?あ、」

呼ばれたコースケは瞬時に上を向き、カップを持っていること気づくがカップは既に斜めになり、中の液体がこぼれ始めるのがカノには見えた。

「危ない!」

カノが手を伸ばして、危険を教える。

コースケは上を向いていたがすぐにカップを持った手を下げ、しゃがみ込むと目を瞑った。

その場の誰もが湯気が出ている飲み物がコースケにかかると思った。


「これは」

隆が声を出し、リュウジは無言でソファから立ち上がる。

コースケは熱い飲み物が降ってくるのをかがんで耐えようとしゃがんだ状態だったが、いっこうに降ってこない液体を不思議に思い、上を見上げ、そしてその光景を見て、立ち上がると声に出した。

「え、浮いてる」

カップからこぼれた液体、いやカップに入っていた液体が空中で固定されたように浮いていた。


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