第16話 土地の力ってなんだって話

静まり返ったリビングの机の上、そこにある地図上に★を逆さまにしたマークが浮かび上がっている。

リュウジは何度かその線をなぞり、爆破箇所を含めた線上、各頂点周辺にある何かを探しているようだ。

線を引いたコースケ本人はリュウジのその様子を見て、やってやったぜと言う顔をしている。

「五芒星、でもこれは逆にしたものですね。逆五芒星、調べると悪魔の象徴って出てきます」

「あ、悪魔、それがここに現れるんでしょうか」

隆とカノが話しているとリュウジがチラリと見て口を開く。

「一般的に五芒星は結界、守護の陣だよ。超常的な何かを召喚、または使役する際に自分の身を守る為に使われるんだ」

「それが逆になるということは?」

隆が質問する。

「うん、身を守れないし、乗っ取られるね。まぁ、ちょっと宗教観は考えないでもらうと超常的な何かってのが具体的に天使とか悪魔、精霊って言われるものだけどこれは人間が決めた種族性であって、全てが同じ力でその時にどう使われたか、どう感じたか、それでその時の人たち、もしくは後世の人たちが天使、悪魔って言ってる可能性が大きいと思ってる。ただ、我々ユタ一族もだけど呪術を扱う者たちは召喚、使役をする際に必ず依り代を創るからね。紙で作った人形(ヒトカタ)とかはマンガとかにも出てくるし、そういったモノに力を宿して、属性を付与しているんだ」

「なるほど、勉強になります」

隆がうんうんと頷いている。

それを聞いていたコースケが続いて質問する。

「でもよ、親父、それなら新宿区に書かれたこの逆五芒星はどんな意味になるんだ?」

「そう、そこなんだけど、実は元々関東、特にこの東京は大きな結界に守られているから局地的なこの逆五芒星でどうにかできる訳はないんだ。ただ、コースケが線を引いた逆五芒星のポイント付近、私が書いた土地自体に力があるポイントだけど少しずれているのもあるが将門公由来の寺社仏閣がある」

それを聞いた隆が顎に手を置き、口を開く。

「平将門、歴史で勉強しましたね。あと都市伝説とかで、怨霊とか」

「うん、そうだね、怨霊って言われるけどこれも力による作用だと思ってる。身体に影響を受けやすい人ほど体調が悪くなったりするからね。怨霊と思っている人もいれば、信仰の対象としている人もいる、人々の想いが力の属性、方向性を決めてしまう可能性もある。人間もそうだけど何事にも二面があるからね、それに特に強い力はそういった傾向になるから」

「なるほど、確かに何事も二面性ですよね。それで、この地図の五芒星ですが、比屋根さんの見解としてはどうですか?」

「見解か、こればかりは何とも言えないけど、いくら由縁の土地だからと言って将門公の復活とかそういったことはないと思う。ただ、その力のある土地で事件が起きているのを考えるとこの五芒星に意味があると感じるなぁ、結界とも違う、かといって何かを召喚するにしてもそれが何なのかはわからない」

「そうですよね、やはり情報が少ない。ですがこの五芒星の残りの場所を次の現場とさせていただきます」

隆がそう言うとコースケが慌てて口を挟む。

「ちょ、いや、書いたの俺だし、こんな簡単に決めちゃっていいのかよ」

隆はコースケに向き直り、笑顔で伝える。

「コースケくんの直感と比屋根さんの見解があるのであれば今の最重要エリアとするのが自然ですよ」

「そ、そうなの?」

そう言ってカノを見るコースケ、カノはその視線に頷きで返すのが精いっぱいだった。


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