交わる関係性


 変化と言われても何も特別なことはしなくて良いと思う。

 普通に話したり、遊んだりして気分を上げてくとかが、俺の思い描く変化だ。

 心が潤えば、身だしなみとかオシャレにも気を配れるようにもなるだろう。

 とはいえあの二人、原石の中でも最上級の素材を持ってるから、最初の変化さえ起こせればあとはなるようになるはず。


 「…………」


 放課後になり、隣から視線のようなものを感じた。

 振り返ると、音無さんがこっちを見ている。手元に用意されたカバンをみるに、もう準備万端なのかもしれない。


 「音無さん、一緒に帰ろうか」

 「…………」


 小さく頷きだけを返す彼女に、笑みがこぼれる。こういうささいなのもきっと変化につながっていくだろうからな。

 連れ立って教室を出る、すると、隅っこの方に彩華がいた。隣のクラスのホームルームの方がちょっとだけ早かったのだろう。

 こっちに気付いて駆け寄ってくる。


 「悪い、待たせたな……?」

 「いえ、大丈夫です」

 「…………」

 「…………」

 「とりあえず、帰るか」


 ここだと目立つので三人でそそくさと昇降口を抜け、外へと出た。

 音無さんも帰る方向は一緒とのことで、三人並んで歩きだす。


 しばらくして、音無さんが声をかけてきた。


 「……友達っていつも、どんなことをしてるの?」

 「えっ」

 「私友達いたことなくて、よく分からないから」

 「そうだな……」

 

 なんと答えようか迷っていると、隣を歩く彩華が背筋をしゃんとして言った。


 「そんなの決まってるじゃないですか、セックスですよ」

 「ぶふっ――!」

 「……そうなの?」

 「もちろんです。登校する前に濃いのを補給して、放課後にお互いの家に遊びに行ってから交わる。休みの日は一日中してるんです」

 「知らなかった……」

 「ちょ、ちょっと待て? なんでそうなるんだ」


 俺が慌てて止めると、彩華は不思議そうに小首を傾げている。

 それから、知ってるでしょうと言わんばかりに口を開いた。


 「だって、セックスフレンドっていうじゃないですか?」

 「あ、いや……それは特殊な例でだな、普通はそうはならないんだぞ」

 「そうなんですか?」


 意外とばかりに驚いたような雰囲気を出す彩華に、納得してもらえるよう俺は説明してみせる。そもそもその偏った知識はどっから……家に本がいっぱいあったのが関係してるのかもしれないが。

 ややあって納得したように首を振る彩華。すると横から、音無さんが割って入ってきた。


 「……ねぇ、結城くんは、私とセックスしたい?」

 「ぶふうっ――!」

 「どうなの……?」


 じろじろ見られ、思わずたじろいでしまう。

 視線を逸らすと反対側にいた彩華も、じろじろと見てきている。まるで逃げ場はないぞと言わんばかりの雰囲気だ。


 「……っ」


 そりゃ、したいかしたくないかでいったらもちろん、したいに決まってる。

 俺はまだ彼女いない歴=年齢だし、音無さんと彩華、二人とも魅力的だ。でも、ここで素直にはい、と言えるような人間にはなりたくなかった。

 だって二人とも、俺の大切な友達なんだから。


 「……そういうのはさ、仲が深まったやつ同士がすることだと、俺は思う」

 

 苦し紛れの主張だけど、納得はしてもらえたらしい。

 音無さんが小さく頷いてみせて、


 「じゃあこれから親睦を深めましょう」

 「えっ」

 「わたしも、公平くんとの親睦を深めたいです」

 「え?」


 なぜか二人ともに生き生きしだした。

 話してるとこ悪いけど、あのこれ、最後はヤる流れなのか……?

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