第21話 そして…
ルビンの取った戦闘形態は人型だった。
右を前に半身に構える。左足は相手に対しつま先が45度くらい外を向く。後ろ側に7割加重。左手は心臓の前に軽く拳を握る。右手は身体から15cm程前に出し、肘から先は床と垂直。右手は握らない。小指側を相手に向け、人差し指以外は軽く指を曲げている。人差し指はピンと天を指し目と指先の延長線上に相手の眉間がある。
「名前を聞いておこうか。お前の墓標に刻まなきゃいけないからな。」
ルビンは挑発した。
「ふん。お前に名乗る名は無い。お前はここで消滅するだけだ。」
男は存外ノリが良いのか、言い返すと羅漢拳の構えを取った。
羅漢拳は拳の打ち下ろしに特化した拳法だ。しかし拳に気を遣りすぎると足を踏みに来たり色々小技を使ってくる。
男の構えは右手を顔の高さで弓を引くように拳を握り、左手は腰溜めにし、軽く腰を落としている。身体はほぼ正面を向いている。
一見足元が隙だらけに見えるが、誘いかもしれない。
ルビンは誘いに乗ってみることにした。
掌底を相手の顎に突き出すようなフェイントをかけながら手を引く反動でローキック。
見え見えのフェイントだからすかされると思ったが、そのまま直撃。
相手は微動だにせず拳の打ち下ろしを行う。
ルビンは避けたが体勢を崩して反撃出来ず距離を取った。
間を置かず衝撃波。
ルビンは反撃のタイミングが得られないまま逃げ回った。
「お前ら何をしとるか」
誰かが通報したのか警邏隊がやってきた。
隊長らしき男は抜剣しており、隊員達は槍を構えている。
謎の男は警邏隊を無視して攻め立ててきた。
結果ルビンを狙った衝撃波が警邏隊に被弾することになった。
「制圧」
隊長の命令に従い警邏隊が一斉に謎の男に槍の石突側で押さえ付けようとした。
謎の男は煩わしそうに腕を一閃させた。その範囲にいた者は衝撃波で吹っ飛ばされることになった。
「抵抗するか。刺突!」
隊長の号令で隊員は穂先を男に向けると一斉に突き刺した。
男は避けきれず脚に槍をうけてしまう。
ルビンは両手を挙げながら、少しづつ現場から後退りしていった。
そして、みんなの意識が男の方に向いた瞬間に地面に擬態した。
男は一瞬で怪我を治すと同時に今度は殺傷レベルの衝撃波を起こし周り中を吹き飛ばした。警邏隊の隊員達は隊長も含め全て倒れ伏した。
「ちっ。逃げやがったか。娘から処理するか。」
男は独り言を呟き姿を消した。
(危なかった。これは報告案件だな。)
ルビンは擬態したまま移動し、ある程度離れたところでスライムに戻り転移した。
勇者殺人事件 ふたくちりょう @yuckoro
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