第20話 戦いは唐突に
「このまま返すと思ったか?」
「しまった。囲まれている……なーんて焦ると思ったか?
とっくの昔に気がついていたさ。」
「お前らは知りすぎている。大人しく捕まれば命まで取ろうとはしない。ただしそこの魔物はここで消えてもらうがな。」
まわりを囲んでいた者達が姿を現した。
神官服の上に簡易防具を付け、槍を構えた男達が10人。
チグハグな格好をしているが、それなりに修練したのだろうなという構えだった。
ルビンはスライム形態から賢者スタイルに変化した。
すかさず印を結ぶと防御結界を構築した。スライム形態のままでも結界は張れるし印を結ぶ必要も無いのだが、戦いには虚仮威しも必要なのである。
案の定男達は躊躇していた。
「何をしているか、かかれー。」
リーダーらしき男が叫ぶと男達は一斉に掛かってきた。
が、結界に阻まれて槍は全てルビン達の手前で止まったのだった。
その隙にアリサはボウガンで男達の腕や肩の防具の隙間を射抜いていった。こちらからの攻撃は結界を通るのだ。
ガリウスは呪文を構築していた。
「お前は学習能力が無いのか。」
ルビンはガリウスの呪文をキャンセルしたのだった。
ところが、同時に結界の表面に電撃が走った。
「ダブルスペルか。器用だな。でも、結界は破壊できないぜ。」
槍の男達も全員アリサに腕や肩を射抜かれ戦闘不能状態になっていた。
(こんな奴らで本気で俺たちを止める気があったのだろうか。)
ルビンは相手が弱すぎることに疑問を抱いた。
(ガリウスにしても俺に呪術が効かないのわかっていたはずなのに)
ルビンは嫌な予感がして、アリサに注意を促そうとした。
その瞬間、結界は無くなりルビンは衝撃波で吹っ飛んだ。
「見てられねぇな。」
そこには広場に現れた司祭服の男が立っていた。男は青年のようにも壮年のようにも見え年齢不詳な感じだった。何より印象的なのは何の感情も表さない作り物みたいな眼だった。
(こいつの存在を忘れていたぜ。こいつはいったい何者だ。)
ルビンは衝撃波により賢者スタイルが崩れてしまい、スライム形態に戻ってしまった。
アリサもあおりを食らって倒れていたが、大きな怪我は無いようだ。
(この世界の知性体に俺様の結界を破る事が出来るはずが無い。これは報告事項だな。)
ルビンの結界を無効化するにはルビンと同等以上のアクセス権限が必要となる。
ルビンと同等以上の権限を持つ者は6人の調整者とその眷属。調整者は全員既知だし、その眷属は調整者との繋がりが明確にわかるようになっている。
つまり、知らない相手は不正アクセスという事だ。
ルビンはこんな奴に構ってられるかとばかりに、アリサの元にショートジャンプし、一緒にココの所へ転移した。
「ココ、逃げるぞ。」
ルビンはココを連れてもう一度転移しようとした。
ところが、ルビンは再び衝撃波で弾き飛ばされることになった。
「くそ、マーカー付けられたか。」
「ルビン大丈夫?」
「俺様は大丈夫だ。お前はココを連れて逃げろ。」
「くっ…。ココ行こう。」
アリサはココを連れてこの場を離れた。
ルビンは戦闘形態を取り、謎の男と対峙した。
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