間話3 鬼岩城 3

「やぁ、お待たせ。姫は無事だよ。魔力欠乏で寝てるけどね。」

 落ち込んだ感じだったので殊更明るく言ってみた。

「ああ。先生か。娘は無事でも俺がこの体たらくで迎えに行くことなんか出来やしない。」

「でも俺は助ける気は無いぞ。」

「ああ、わかっているさ。俺も頼む気は無いよ。」


「お前の娘のことだが、俺の分体をガーディアンとして付けておくよ。姫を守って戦うというシチュエーションなかなか楽しかったからな。」

「あんたは世俗に関わら無いのじゃなかったか?」

「俺の分体は機能限定版にしておくからこの世界そのものに影響を与える事はないさ。」

「ちなみに娘を国に送り届けてくれるという事は…。」

「面倒くさい。俺がそんな事をわざわざするわけがないだろ。まあ、俺の分体がどうするかまでは俺は知らないがな。」


「じゃ、俺はそろそろ行くよ。じゃあな。」



 分体が戻ってきた。統合した俺は作業を始めた。作るのは変身コントローラ兼魔力封印装置のルビック。そしてガーディアン用の分体。

 分体の方は本体とのリンクを無くしルビックとのみリンクするようにした。こちらから一方的にモニタリング出来る様にはしておいた。能力は勇者と際どい戦いが出来る程度とした。記憶は必要最低限と思われるもののみ残し、後は氷の女王アンジェラ=コキュートス

の部下で、女王の娘コーデリア=コキュートス

のガーディアンであるという偽の記憶を作っておいた。


 寝室で動く気配があった。勇者が気がついたようだ。俺は寝室に向かった。


「ここはどこでしょう。あなたが助けてくれたのですか?」

「安心したまえ。ここには誰も来ない。傷が治るまでここにいるがいい。

 私はマーロンと言う。不可侵の森に棲む者だ。ここはどの国にも属さない。」

「他の者はどうなりましたか。」

「魔族の娘とスライムは助けた。それ以外のものは知らない。」

「そうですか。助けていただきありがとうございました。私はシマムラと申します。お礼を差し上げたいのですがどのようなものを差し上げたら良いのでしょう。

 私はヒト族で勇者と呼ばれています。大概のことでしたら出来ると思いますので、何なりと仰って下さい。」

「では氷の国コキュートスにこの娘を連れて行ってくれないか。この子はコーデリア=コキュートス。氷の女王の娘だ。

 これはルビック。姿を変えたり能力を偽装する為のアイテムだ。コキュートスをヒトに偽装したりお前を魔族に偽装するのに使える。

 スライムはこの娘のガーディアンとして娘がピンチの時目が覚めるようにしてある。普段はルビックの中だ。」

「わかりました。地図とかあるのですか?」

「地図は無いがルビックがナビゲートする。」

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