間話2 鬼岩城 2

 爆心地は盗賊風の女。一番近くの勇者は直撃だったが、死んではいないようだ。あれで死なないとは人間とは思えない。それでもダメージで動く事が出来ないようだ。


「あれで死なないとはしぶといわね。」

 狙いは勇者だったのか俺達だったのか。いずれにしろ聖女の仕業だった。

 その聖女の前には護るように騎士が盾を構えていた。

 蘇生術か。いやネクロマンシーか。こいつは聖女風の格好したネクロマンサーなのか。

 そもそも治療しようとしたのが勇者だった時点で違和感があったんだ。


 騎士が勇者にとどめを刺そうと剣を振り上げた。狙いはそっちか。

 俺はまだ動けない勇者に障壁を張ると同時に治癒を試みた。

 

 騎士は暫く勇者に斬り込み障壁に弾き返されるのを繰り返していたが、諦めたのか、いきなり姫に襲いかかった。

 姫にも当然障壁を張っているので攻撃は弾き返されるのだが、それに気づいていない姫は魔術で迎撃しようとしていた。

 その魔術式を見た俺は青褪めた。そのまま放つと暴走してしまう。


「姫様待って…。」


 間に合わなかった。


 姫と勇者は何とか護ったものの全ては凍りついてしまった。

 あの何ちゃって聖女(ネクロマンサー)は姿が見えない。転移石でも持っていたのだろう。


 俺の城を支えていた部分は凍結していたので切り離す事にした。溶けた時点で自壊するようにしておいた。

 

 俺は勇者と姫を連れて転移する事にした。転移先は城の北にある森の中にある魔導師としての俺の家だ。この森はどの国にも属さない不可侵領域となっている。この森に許可なく立ち入った者は大魔導師マーロンの怒りに触れるという事になっている。

 実のところは時々魔導師に化けた俺が脅しているだけなんだけどね。



 俺は魔導師フォームとなって姫と勇者をベッドに寝かせた。

 姫は魔力の使いすぎなのでひと眠りすれば治るだろう。あのままだったら生命力まで削り取られて危なかったけど。

 勇者は治癒の効果ともともとの勇者の力なのか身体の方はじきに元通りになるだろう。

 だが、問題は勇者がヒトと人工物のハイブリッドになっていた事だ。明らかにロストテクノロジー。現在稼働しているべきでは無いものだ。




 まぁそれは置いといて、姫が無事だった事ベルモスに連絡しておかないとな。俺はマップを呼び出し、ベルモスのマーカーを探した。

 ベルモスはどうやら捕まっているようだ。


 俺はヒトと魔族の戦いに関わる気は無いが、とりあえず姫の無事は伝えてやろう。


 俺は分体をベルモスの元へ飛ばした。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る