間話1 鬼岩城

 俺が勇者シマムラと出会ったのは鬼岩城。勇者が大魔王を打ち倒したその場所だった。

 逃げる途中で逸れた娘を探してくれとベルモスに頼まれて、城の中をあちこち探し回りやっと見つけた時、残党狩りをしていた勇者チームとかち合ってしまったのだった。

 騎士はいきなり盾で押し潰そうとしてきた。スライムは核以外は物理攻撃が効かない。そして核を正確に狙うのはなかなか面倒なのだ。だから全体を盾で押し潰そうとしたのだろう。しかし俺は重力変換で盾を吹っ飛ばし、騎士の頭上に上がった盾にこんどは重力をかけ押し潰してやった。

 その隙に詠唱していた賢者がインペリアルバーストを放ってきた。こんな狭い場所で広域破壊攻撃をしてくるなんて馬鹿じゃないか。俺は全て吸収し収束して返してやった。賢者はチリも残さず消し飛んでしまった。魔術防御も出来ないのか。こんな奴らに大魔王は負けたのか?

 おそらく斥候探索担当と思われる盗賊風の女が、姫を人質に取ろうとしている。俺はすかさずニードルを飛ばし、壁に縫い付けてやった。同時に牽制の為、勇者と聖女にアッシドブレスを浴びせてやった。

 勇者は聖女を抱えて範囲外へ飛び退った。


「まだやるかい。今なら見逃してやるから尻尾を巻いて帰るんだな。」

 俺は姫が心配なのでこれ以上戦いたくなかった。強気に出ることによってここで帰ってくれるとありがたいんだが。


「君はスライムに見えるけどスライムではないのだね。」

 勇者は何事も無かったように話しかけてきた。

 くそっ。勇者という奴はこんな時でも爽やかイケメンなのかよ。何の動揺も映さない涼しげな目元が場面に似合わなすぎて不気味だ。

 それに対し、聖女は憎しみの籠った眼で俺を睨んでいた。意識は騎士と俺の方を行ったり来たりしている。もしかして騎士とアチチな関係だったのかな。


「大魔王との戦いで全員無事だったのに、こんなところで2名も亡くなるとはな。一人は重傷だし。俺達はもう戦うつもりはないからユリイカの手当てだけさせてもらえないかな。」

 そう言って勇者は盗賊風の女の所へ向かった。


 俺は勇者を警戒し、姫と勇者の間に陣取った。そして姫を安心させるように微笑んだ。が、スライム形態だったから伝わらなかったようだ。

「姫、安心召されよ。ここからは私がお守りいたします。」

 ちょっと気取って言ってみたが、安心してくれたかどうかよくわからない。


 その時だった。いきなり辺りが光に包まれた。音と衝撃は後から後からやって来た。俺は姫を守るため姫を包みこみ、その後建物の崩落を防ぐため周りを固定化して硬化モードに入った。


「スライムさん…。」


 姫には俺が爆散したように見えたかもしれない。


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