第15話 ホテル クリスタルバレス
ルビンが女神像の台座に消えた後、待っている間どうしようか考えていた。
(このまま待っていても暇だし、ゴローに会って情報収集してこようかな。でもそれより先に服をなんとかしなきゃ。)
さっき着ていた服の一部が焦げてしまったので、今はローブを羽織って誤魔化している。
アリサはホテルに預けてある道具を取りに行くことにした。
アリサがホテルに着いた時ちょうど支配人がフロントに立っていた。
「アネージャさん。すみません。急に辞めてしまって。」
「あんな事があったから仕方ないよ。それにどうせ暫く仕事にならないしね。」
「そうなんですね。大変ですね。」
「他人事だなぁ。まぁやめたんだから関係ないか。
アリサさんの荷物は宿舎から客室に移動したからね。
はいこれが鍵。201号室だよ。1日6000シルなのでよろしくね。」
支配人は穏やかな口調とは裏腹にちょっと怒っているようだった。
「荷物を移したという事はもう料金が発生しているということね。」
「そうですね。先に精算させてもらいますね。アリサさんのお給金の未払い分から、制服のクリーニング代と賄い代と宿泊費差引して、8000シルお渡しします。明細はこちらになります。」
アリサは明細と8000シルを受け取った。
「宜しければこちらにサインお願いします。」
サインしたアリサはさっさと部屋へ行くとすぐに着替えた。冒険者をやっていた時に着ていた丈夫で動き易い服だ。
着替えている途中で、火傷の治療をしていたスライムが離れた。火傷は痕を残さず消えていた。
「ありがとうスライムさん。」
「……。」
「喋れないんだよね。でもどうしようかしら、街中でスライム連れてくわけに行かないし。」
そう呟いたら、スライムはバングルに擬態してアリサの左手首に巻き付いた。
アリサは道具箱を肩に掛けると部屋を出た。道具箱の中には折りたたみ式のボウガンが入っている。
武器の類は都市に入る前に検問所で預けることになっている。だけどこれは大した殺傷力が無いとして預けなくて済んだのだった。
ホテルを出るとき、支配人のアネージャはまだフロントに居た。
「アネージャさん。例の件は何か進展あったのかしら。」
「ああ、勇者とココさんの持ち物を全部警察が持って行ったのと、その中に『勇者の剣』
が無いと騒いでいたことぐらいかな。」
「そう。でも勇者様は来た時から『勇者の剣』を持っていなかったような気がする。考えて見れば変だわね。」
武器は検問で預けるのが当たり前なので、剣を持っていないのは疑問に思わなかったけど、勇者様の場合は特例で帯剣が許されているのだ。
「何故持っていなかったんだろう。」
アリサは疑問に思ったが、深く考えるのはやめて神殿に戻った。
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