第11話 ゴローとアリサの災難

「単刀直入に聞くけど、勇者を殺したのはあなたなの?」

「殺してない。」

「じゃあ何故逃げたの?」

「逃げてない。散歩に出ただけだもん。」

「だもんてあんた。無理だから。」

「……。」


「…まあいいわ。あんた勇者の正体知っていたの?」

「!!!!」

「リアクションで解るわ。根は素直なのね。」


「それよりも、あなた『あすみの剣』を知ってる?」

「???」

「知らないか。じゃあ聖女がどこにいるかしってる?」

「それは、くそ聖女ネルフェのこと?どこにいるかなんて知らないわ。あのくそ聖女死ねば良いのに。」

「そう…。」

 アリサは気落ちした表情で俯いた。






「君がココかい。」

 ゴローが到着した。

「色々聞きたいことがあるんだ。一緒に来てもらえるかな。」


 ゴローはそう言ってココに手枷を嵌めた。


「ごめんね。これは魔術封じの枷なんだ。捜査事務所に着いたら外すから暫く我慢してね。」


 ゴローがココを連れて行こうとした。

 その時、


「そちらではなく、わたしと来ていただきます。」

 皆が声の方を見ると厳つい神官服の男が立っていた。


 ルビンはココの頭から前に出て戦闘態勢になった。

「こいつはやばい奴だ。」


「猫が喋った…」


「いや、それは後回しだ。」


「あなたはガリウスさんでしたね。公務の邪魔をしないで頂きたい。あなたにココを連れて行く権利はない。」


「勇者の事は全てに優先する。」


「それは無理矢理すぎるでしょう。本当に勇者絡みの事情だったとしても上を通して正式に依頼してもらえますか。」


「問答無用だ。【光の精霊よ我は求める。光輝招来】」


 ガリウスの魔術により、辺りは白光に塗りつぶされた。

 その隙にココを連れ去ろうとしたガリウスをルビンが弾き飛ばす。


「むっ、なんだお前は。魔物の反応はなかったぞ。具現化した精霊か。」


「それがお前の素か。」

 ルビンは低く構えて威嚇する。

「シャーシャー」


「どっちかというと可愛いんだけど。」

 目潰しから復帰したアリサが突っ込んだ。


 ルビンは変身しようと思ったが、別の問題が生じるのでやめた。


「あなたを拘束します。」

 ゴローがガリウスを捕まえようと手を伸ばした。


「触るな下郎。」

 ガリウスはゴローの腕を振り払うと、蹴り飛ばした。



 ゴローが衝撃を逃す為に飛んで距離が離れたタイミングでガリウスは唱えた


『雷神トールよ我は願う。雷鳴のロンド』


 辺りは電撃と轟音に包まれた。

 ルビンは慌てて防御結界を張ったが間に合ったのはココだけで、アリサとゴローは衝撃で吹き飛んでしまった。


「ココ大丈夫か。」

 ルビンはアリサとゴローにヒーリングをかけながら、転移の準備を始めた。転移するには対象物の設定と転移先の設定が必要になる。置換は空間ごと入れ替えるが転移は対象物のみ移動する。防御結界張りながらだと置換は使えなかった。


 結界を張っているのがルビンだと気がついたガリウスは攻撃を仕掛けた。


『雷の精霊よ。我腕に宿れ。雷撃』


 ルビンは殴られ吹き飛んだ。雷撃には衝撃に因るノックバック効果とスタン効果があった。

 一瞬でルビンは回復したが、その一瞬でガリウスは結界を破壊してココの腕を掴んだ。


 ルビンは設定の終わった転移を行おうとしたが無効化されてしまった。



「転移なんかさせませんよ。」

 司祭の格好をした男が現れた。


(何者だこいつは。俺様より上位権限を持つのか。)

 ルビンは慌ててココの元に走った。


(間に合わないか)


 やばいと思った俺はココの封印を解こうとした。しかしその時俺は劫火に灼かれたのだった。

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