第10話 チェイス

「見つけた。」

 アリサの見つめる先には、頭に子猫を乗せてぼーっとしている少女がいた。

 あまり表情は無いが笑うと可愛らしいだろうなと思わせる顔立ち。従者として仕事をしていた時は思わなかったが、今見ると年齢より幼い感じがした。身長は14〜15歳くらいにしてはちょっと低め。

 しかしアリサの目には別の姿がダブって見えていた。それは魔族の少女の姿。人型にかなり近いが、頭には巻いたツノ、耳は尖ってる。


 ココが犯人かどうかはわからない。でもこの事件は彼女の話を聞かないことには進展が無い。

 

 アリサはゴローに連絡を取り、見つからないように背後から近づいた。



 ルビンはアリサの視線には気がついていたが、鑑定眼の発動を察知して警戒していた。通常の鑑定眼だったら大丈夫だが神眼に近い波動が感じられた。魔族だとバレてしまったかもしれない。


「どうやら見つかったようだ。背後からアリサが近づいて来る。それと多数の気配がここに向かってきている。戦うか逃げるかどうする?」

「ここでは周りを巻き込んでしまうわ。一旦ここを離れましょう。」

 俺たちは人気の無い方向に走り出した。


「逃がさないよ。」

 アリサが魔術を発動した。


「やられた。マーキングされてしまった。」

 攻撃では無いので防御機能が反応しなかった。

 何をするにも距離を稼がなければならない。

「マーカーを外すにも、ココの封印を解くにも時間が必要だ。ルビックの能力で脚力を強化する。全速離脱だ。」


「その程度で逃げられると思わないでね。」

 アリサは速力上昇の魔術を使った。


「くっ、逃げられないか。」

 だが、周りに人が居ない所まできた。


 俺達は立ち止まり振り向いた。

「何故追って来るの?」

「逆にこっちが聞くわ。何故逃げるの?」

「お前は何者だ。ホテルの客室係が使うような能力じゃない。」

「あら、喋るなんて変わった猫ね。」



 ルビンは迷っていた。自分の力を使えば逃げるのは容易い。だがヒトの街では行くあてが無い。つまりここで逃げたところで問題は解決しない。

 一方、ココが逃げている理由は勇者の秘密を守りたいという事と、捕まって魔族だとバレたら身が危ないという事だ。


 どうやらここへは誘い込まれたようだ。既に包囲されていた。

 この囲みを破ろうとしたら相手に怪我をさせてしまうかもしれない。転移は見せたく無い。ではどうするか。


「ココ。一旦捕まろう。見られて不味いものは全てルビックの次元収納に隠す。」


 ルビンは猫になりきった。ココは抵抗の意志は無いとボディランゲージした。


「あら、追いかけっこは終わり?」


 アリサが近づくと同時に隠れて包囲していたもの達も姿を現した。


「じゃあ、警察の人達が来るまでちょっと質問させてもらって良いかしら。」

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