第5話 詰所
王国では現在犯罪対策専門の部署を作ろうと軍の治安維持部隊から一部独立させ、警察組織を作ろうとしていた。現在組織されているのは捜査課と警邏課の2部署。取締や鎮圧に関してはまだ軍の力を借りている状態だった。
警邏課は犯罪抑止の為に巡廻するのが主な業務となる。効率良く回れるように各地に詰所が設けてあった。
ココが連れて来られたのは旧貴族街に近い詰所だった。
「お疲れ様です。うちの屋敷の側に挙動不審な者がいたので連れてきました。」
「これはキルク様。承知致しました。お引き受け致します。」
キルク=ベルデンは新しく出来た警察組織の管理官であった。年よりも若く見られて舐められがちなのが悩みの種だった。ココは兵士と勘違いしたが、新しく支給された制服を着ていたのだった。
キルクが帰った後、留守番の兵士はココを奥の部屋へ連れて行った。そこは机と椅子しかない殺風景な部屋だった。
「とりあえず、そこの椅子に座ってもらえるかな。私は警邏課第一小隊のボルグと言います。君の名前と、何故ベルデン様のお屋敷横で座り込んでいたのか教えてもらえますか。」
ボルグはマニュアル通りに丁寧な言葉遣いをしながら心の中では、夜勤明けで就労時間が終わってるのに面倒くさいなと毒づいていた。
「……」
「なんか言えよ。」
何も喋らないココにイライラしたボルグは言葉が雑になっていた。
(早く誰か帰って来ねぇかな。)
ボルグは気を鎮めるためにコーヒーを淹れることにした。
ボルグが流しの方に行き一人になった時、ココはルビックが振動しているのに気がついた。ルビックは左手首にブレスレットのようにはめていた。
右手で触ると思念が伝わって来た。
「唱えよ。サモンルビンハゲチャビンと。」
「えっ?」
「サモンルビンドビンだ。」
「さっきと違うじゃ無い。」
「サモンルビンだけだと何か寂しい気がしたから適当に付け足しただけだ。さぁ唱えよ。サモンルビンカイセンドーン。」
「何か怪しいからやめとく。」
「いやいやいや、この状況を打開したいのなら俺を呼ぶんだ。リピートアフターミー。サモンルビンプリーズ。」
「わかったわよ。サモンルビン。」
そこに現れたのは、赤ワインのような色のスライムだった。
「ヤァ、ココ。俺様はルビン。スライムのように見えるかもしれないけど、スライムごときと一緒にしてもらったら困るよ。俺様の実態は…。あ…禁則事項に触れるんで言えない。もとい。スライムを超えるものスーパースライム。略してスパスラだ。」
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