第三話
それから時は流れ・・・。あの森での出来事の後、
兄の
一族の直系だけが持つ特殊な能力が備わっていることも解り、努力が実を結んだのだった。
その頃の
あの件の
けれども
ある日、どちらの親にも内緒でこっそり邸を抜けた
そんな中、
「
「腕試しってことか?」
なにかあってはいけないと、十五歳になるまではだめだと言われている。
「というか、人助けかな。術士たちが請け負わないような簡単な怪異や、逆に厄介事を俺たちが片付ける感じかな」
「けど、どうやって情報を集めるんだ?俺たちは邸の敷地内以外は父上に許可を取らないと行けないだろう?まさか抜け出すのか?」
「抜け出すのは正解!情報集めは、・・・そうだな噂を流す」
こういう時の
黒い衣の袖を捲って、そこらへんに落ちている適当な大きさの木の板を手に取った。
「なにをしている?」
その木の板に小屋に置いてあった小刀でなにやら文字を掘り出した。
そうやって文字を掘っている中、
「下手くそだな」
「うるさいぞ、
乱雑な文字は小刀で掘られているため、ものすごく下手だった。
「なになに・・・どんな些細な怪異でも無償で解決します。お困りの方は文にて依頼されるべし?」
「これを都の近くの森の入り口にある祠の裏に置いておく。で、都で噂を流すんだ。祠に頼みの文を置いておくと怪異を解決してくれるらしいって」
完成した手製の看板を突き出し、
「けど、俺たちでは解決できないような強い妖者や怪異はどうする?放っておくのか?そんなわけないよな、」
「もちろん。それは正規の依頼として先輩術士たちに譲るのが道理だろ。
俺は本家には入れないからな、と笑って
白い衣ではなく従者の衣を纏わせるのか。全部母である
修練を受けさせないのも、他の一族の集まりに参加させないのも。
「なあ、
「ん?別にいいよ。面白いから」
「はあ!?どこが面白いんだ!
あんな小さな邸にふたりで閉じこもり、ほとんど外に出ることも許されず、なにかある事に嫌がらせをされる。
時間を間違って知らせたり、祭事の際に纏う夫人の分の衣を相応しくない色を用意したり、膳がひとつ足りなかったり。
「母上はああいう性格だから、俺の心配はしても自分の事には無頓着だし。俺は
「お前ってやつは・・・」
なんて奴だと言いかけて止める。強がりとか出まかせではなく、本気で言っているのだ。だからこそ、
自分だけは
「とにかく、お前は俺が守るから、なにかあったら言うんだぞ」
「なんだよ、ふた月しか生まれた日が違わないのに、兄さん気取りか。
「話を聞いていたか?俺が守るんだ」
「いや、俺の方が強いから俺が守るよ」
にっと笑って
埒が明かない。
「じゃあこうしよう。俺が危ない時はお前が、お前が危ない時は俺が守る。これでいいだろう?」
「俺が危なくなる時はないけどなっ」
「俺もだ」
ふたりは顔を見合わせて笑った。
それから、妖退治の依頼をこなすようになり、ますます
そして実践を積み、少しずつ実力を付けていった。
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