第四話
さらに三年後。十五歳。
今年も真白い花びらが丘を彩り、晴天の空に雪のように舞い上がった。
「もしかすると、来年は来られないかもしれないから、少しだけ霊力を分けておいたよ。何年かは咲き続けられると思う」
毎年捧げている舞と、仮面の制御がなくなった状態での霊力を吹き込んだ笛の音で、老木はなんだか生き生きとしているようにさえ思える。
また
覆っていた仮面は割れてなくなり、本来の姿で横に立っている
違うとすればそこに翡翠の瞳があり、ちゃんと表情が解るということ。
「じゃあ、行ってくるね、
老木を見上げて
やはり妄想なのかと思えてならないが、確かに
「桜の化身はなんて?」
「四神のご加護がありますように、だって。なんでこの地の聖獣である
「俺が知るわけ無いだろう」
首を傾げる
「お前の見ている景色は、俺たちとはどこか違うのかもな」
「わかんない。でも、共有できないのはつまんないよ」
霊や妖は見えるのに、桜の化身の姿はまったく見えない。たぶんそれは
「白髪だけど、十歳くらいの可愛らしい女の子の姿で、頭に桜の花飾りをしてるんだ。でも何百年も生きてるからおばあちゃんなんだよ」
と、昔話してくれたことを思い出す。その時はあまり信じていなかったが、今は理解できる。
「急ごう。
「なんだかわくわくしてきたよ」
「馬鹿。遊びに行くわけじゃないんだからな?」
わかってるよ、と弾んだ声で駆け出した
ふたりを送り出すように、桜の花びらたちがふわりと透き通るような青い空に舞い上がる。
奉納祭の件の後、ふたりは
その志は変わらず、ふたりの道は続いて行くのだった。
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