だいだらぼっち 作者あとがき

 久々にこの作品を加筆していたら、年のせいか自分で書いた癖に不覚にも泣いてましたよ。

 読んでくれる方が同じように感動してくれると嬉しいのですが、その感情の乖離が作品の難しいところですね。


 十数年前にリリーフランキーの東京タワーを正月に一気読みして感涙し過ぎて寝込んだ日の事を思い出したので唐突に書いておこう。

(男子は必ず落涙するので未読の方は是非拝読をおすすめします。決して同等の作品ですと言う意味ではなく、ただの推薦なので誤解無きように)


 年末に年老いた叔母の家が宮崎に有るので、今生の別れとなる前に迷惑掛けて甘えておこうと思い立ち一週間ほど滞在した。

 あまり会わない親族相手に遠慮ほどいけない事は無いのだと、私お得意の勝手な解釈と強い思い込みで大いに世話になった。

 私は今年四十歳を過ぎると言うのに叔母に小遣いを頂き満面の笑みでありがとうを言ったものだ。男と言うのは駄菓子屋に行った時と小遣いを貰うときはいつでも少年に戻るものなのです。(そうですよね?)


 老いた父も旅は道連れ世は情けと言った具合に御供に選んで連れて行った。

 父は行きの飛行機の中で離陸前によく喋っていた。普段酒でも飲まさないと無口な男が良く喋るな、年甲斐も無くはしゃいでいるのだろうかと観察しているうちに、飛行機は離陸の為にエンジンの回転数を上げ始めた。エンジン音が大きくなるのに反して隣の父は口数が減り、仕舞いには身を縮めて黙った。

 飛行機が怖かったのだ。あぁ、この人緊張するとおしゃべりになるタイプなんだと知らない一面を発見した。仕方なく四十過ぎの私が老人の肩をそっと抱いてやり、周囲から白い目で見られたのは語るまでもない。


 宮崎では以前仕事仲間で有った後輩と父と三人でゴルフなどをして遊んだ。

 私を除く二人は格別にゴルフを愛すと言う人間だが、私は初めのゴルフがこのラウンドと言う状況。ルールどころかクラブの握り方すら知らない素人。

 例えるなら初めての水泳がスキューバダイビングで有るような、初めての体育の授業が器械体操で有るような、初めてのSEXがSM3Pで有るような状況。

(例えすぎるのと、すぐに卑猥な文章を選びたがるのが私の悪いところ。でもそんな自分が好き💛)

 結果18ホール回って169を叩くと言う偉業を達成してきました。

 二人は楽しそうだったので、良かった。

「人の為に道化を演じるのもわざとらしさを見せない演技力を求められる、人付き合いの上級テクニックなんだよ」

 と夕飯時に叔母にゴルフの結果を語ったときの関心しきった顔が忘れられない。

「流石、東京の人はちがうねぇ」

「うん、メモっておいて」


 話は大きく変わるが九州の旅で感じたのだが、九州は中々朝日が昇ってこない。

 太陽は東から登って西に降りていく。と言うのを実感できた。日の出でも見るかと露天風呂で六時前から朝日を待っていたが一向に登ってきやしない。

「死ぬは!」

 風呂を出て、茶をしばいていると八時前にようやく朝日が顔を出した。

「俺より遅く起きてくるといい度胸だな、こっちは客だぞ」

 瞳が焼けるほど朝日にメンチを切っていると作り笑いの後輩が教えてくれたが、九州あるあるで夏は逆になかなか太陽が沈まないそうだ、遊びに出た子供は時計など見ないから二十時頃まで帰って来ないのだと、自然夕飯の時間も遅くなる為、九州の夕飯の時間は遅いのだと語って私の気持ちを静めてくれた。


 さて

 ここまで読んで頂き疑問に思った方も多いかと思います。

「なんでコイツはだいだらぼっちのあとがきに粗末な旅の思い出を書き綴っているのやら?ここまで読んだ時間を返せ」

 そう思われているでしょ?

「ではそんなあなたに言いましょう!言ってやりましょう!」




「すいません。ごめんなさい」

 ここまではまったくの私の気まぐれで、徒然なる日々を送っていたために文章が書きたくなったからなのです。

 ここまでお付き合い頂いたあなたと私はもう友達だ!親友だ!ブラザーだ!敬語も無しで下の名前で呼んでくれ語理夢中、イヤ夢中と下で呼んで!

「すいません取り乱しました」


 端的に言うとこの旅で言いたいことだけを書くと数行で終わってしまうので、旅の思い出を少々書いた次第なのです。


 さて、九州宮崎に戻る。

 熊本城や霧島の島津家別邸などを観光し、鹿児島博物館にてピカソの作品に触れた私は、いよいよ翌日は高千穂峰に登山を試みようとその日は眠りについた。

 目を覚ますと翌日はあいにくの雨、普段の行いには人並以上の自信が有った私は過信し、天気予報すら見ていない。絶対に晴れていると盲目的に信じきっていただけに機嫌が悪い。

 甲斐甲斐しく合羽などを用意する叔母に対して、

「僕もう行かない」

 と再三の叔母の説得と勧めと慰めを尖らせた口で拒否して宮崎の旅は終わった。

 つまり、だいだらぼっちの題材になった天野坂鉾を実際に見に行くことは出来なかったのだ、思えば九州に滞在していた全ての日程が雨か曇りばかりで有った。

 気持ちよく晴れたのは帰りの日だけである。

 そう思うと父と子の悲しいお話を書いた私への戒めなのかなと考えが帰結する。

 また、二人が許してくれた頃に天野坂鉾に出会う旅に行きたいと思います。


             おしまい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

だいだらぼっち 語理夢中 @gorimucyuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ