第5話 涙がとまらない...

とりあえず、今夜は安宿に泊まる事にした。


お金の大半はギルドに預けたから問題はないだろう。


大体、この宿に泊まって銀貨1枚。


そう考えると貰った金額だと串焼きを1日3本食べて、此処に泊まると大体40日位でお金がなくなる。


頑張って働いても日本円で1000円、1日じゃ生活が厳しい。



ホームレスになるのは時間の問題だ。


考えても仕方ない...寝よう。



しかし、くくり姫は大丈夫なのか...僕が居ないと悲しむんじゃないかな...


今日はお供えも持っていけなかった...


考え事をしていたら何時しか僕はうとうとと眠ってしまった。



どの位寝ていただろうか?


急に夜中に下半身への快感と体重を感じた。


何かがモソモソと僕の体を触っている。



僕は欲求不満なのかな...こんな幻覚を見るなんて。



「えっ...くくり姫?」


「ようやく目を覚ましたわね..」



「何でここにくくり姫が居るの?」


「貴方を心配してに決まっているでしょう? こう見えても私は貴方の神様なのよ!」



「そうでした」


「貴方が来ないから、心配して探したらこんな所に居るじゃない心配したのよ..何があったの?」



僕は今までの経緯を話した。



「貴方は本当に馬鹿だわ...もう消えかかった私なんかの為に...もう私は居なくなるのよ? 貰えば良かったじゃない」


しかし、くくり姫がこんなにくっきり見えるなんて...あれしかも触れているじゃないか...


「僕はくくり姫が好きだから...そんな事は出来ないよ」


「そう、そうよね...だからね、その来たのよ! 此処には私はそう長くいる事は出来ないわ、だから私が貴方の最初の女になってあげる...そして貴方はそう、私の最後の男にしてあげるわ...」


いきなりくくり姫に押し倒された。


「うぐうううっ」


唇を押し付けられた..その感触が凄く心地良い。


僕はくくり姫の綺麗な髪に触れた...サラサラしてて、それでいてしっとりしていて何時までも触っていたい...本当にそう思った。


「うん、くすぐったいわ」


そう言いながらくくり姫は嬉しそうだ...


くくり姫が僕を触る度に快感が頭から足まで走る...僕は初めての経験だけどこんな快感は絶対に無い。


「くくり姫、そこは..」


「気にする事は無いわ...私はそういう神なんだから、しっかりと味わいなさい」


キスをされ、舐められ、触れる度に...とんでもない快感が走る。


だから、僕も同じ様にくくり姫にする事にした。



「そんな事しなくて良いわ...貴方は私を感じるだけで良い..うううん..のよ」


「違うよ、僕がしたいだけだから」


「全くもう...」



触り方が優しい..凄く大切に思ってくれているのね...こんな優しくされた事は生まれてから1度も無かったわ。


こんな風にされるのって....初めてだわ。


礼二が...私を愛してくれているから...そうなんだ。




「くくり姫...好きだよ」



「好きだよ」と言われるたびに嬉しくなってしまう。


全身で私を感じて欲しくて...幾らでも淫らに、はしたない事を自分からしてしまう。


私はこういう事の為に生まれた神...だけど「こういう行為」を楽しいと思った事は一度も無かった。


それが...今は凄く楽しい...何時も嫌で嫌で仕方なかった行為が...終わって欲しくない。


本当にそう思えた。



「くくり姫...」


「私も愛しているわ、礼二!」




気が付くともう朝になっていた。



そろそろ、終ね...多分私はもう暫くしたら消えてしまう。


体ももう透けてきた...恐らく私の未練は「愛されたかった」それだけなのかも知れない。


「うふふ...神と言われても能力も無い...ただの未練であそこに留まっていたのね」


「くくり姫...体が透けてきている」


「そうね、だけどこれは私にとっては不幸じゃないのよ? そうね幽霊で言うなら未練が無くなって成仏するような感じかしら?」


「そうなんだ...良かった...それじゃ僕が死んだらまた会えるよね!」


「それは無理よ! その為に生まれた私は使命が終わったから消える運命にあった、だけど未練があったから今迄存在したのよ...その未練も礼二が満たしてくれたから....そう消えちゃうのよ」


「消えるって」


「そう、この世から居なくなるのよ...まぁ存在しなくなるのね」


「そんな!」


「ほうら、そんな顔をしないの...私気持ち良かったでしょう? そういう神だからね...貴方の初めての女が女神でしかもその女神の最後の男...それで満足しなさいな...ねぇ」



僕とくくり姫には最初から終わりが見えていた。


僕が悲しい顔をしていたら...彼女の笑顔が曇ってしまう...笑って..そうするしかない。



「そうだね、初恋は叶った...普通では叶わないような女神相手の恋が実った...うん満足だよ」



あははっ本当に馬鹿だわ、泣きながら言っても説得力ないわ。


本当に馬鹿なのよ...イシュタスからジョブやスキルを貰って幸せに暮らせば良いのに...


私に操なんて立てても...私は何もあげられないのに...


どうせ消滅する存在...そんな私の為に...


私が何かあげられる物は無いの...そうだ、どうせ消えてしまうなら...この容姿をあげれば良いわ。


一応、女神だから綺麗な筈だわ...男の子の姿にしても綺麗な筈よね...



あとはそう...私の力で「括ってあげる」貴方を死ぬまで「括ってあげる」


それしか私には出来ないから....



「そう良かった...それなら消えるまで抱きしめてくれるかな...」


「いいよ」



くくり姫は姿が薄くなり...消えていった...


泣いちゃだめだ...泣いちゃ駄目だ...なのに涙がどうしても止まらなかった。


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