第5話 思い出したのは

成人の儀礼である裳着もぎを終えて数日…。


かぐや姫の美しさ、愛くるしさ、豊満なマシュマロボディから溢れ出る母性、その他諸々の噂は全国を駆け巡り、独身だろうが妻帯者だろうが、老若男女を問わず、連日屋敷の前はその姿を見ようとする者で溢れかえっていました。


爺「ふむ…儂らの可愛い可愛いかぐや姫に相応しい男は…居るんじゃろうか」


婆「そうですねぇ。かぐや姫が気に入る殿方が一番良いのだけれど…。何処の馬の骨とも分からない方に嫁がせる訳にはいきませんからねぇ」


爺「少なくともあんなに喚き散らしてる輩には見せるのも嫌じゃな」


お爺さん達は門番に抑えられながら喚く観衆達に水を掛けようか迷っていると、後ろから重みで床が軋む音と、聞き慣れた愛おしい声が聞こえました。


かぐや姫「あら?お爺さん達、どうしたの?お庭の花に水でもかけに行くの?」


幼さがまだ少し残ってはいるものの、凛々しく美しく整った顔、聴き心地の良い声、黒く艶やかで健康的な髪、そして全てを包み込んでくれそうなマシュマロボディ。


とてもこの世のものとは思えない、厚みのあるオーラを放つかぐや姫がお爺さん達に微笑んでいました。


婆・爺「んんんっ!今日もかぐや姫はがわいいっ!!」


思わずうっとりと眺め続けそうでしたが、お婆さんは我に返りました。


婆「そうねぇ…水を求める元気過ぎるお花達にかけてこようかと思っていたのよ」


爺「あぃてっ…そうじゃそうじゃ!たまには…な!」


お婆さんは察しろとばかりにお爺さんの横っ腹に肘打ちをし、2人で庭に繰り出しました。


かぐや姫「お婆さん達は今日も仲が良いのね♪私も…いつかは仲良く添い遂げる殿方と出会うのかしら…」


??「…かぐや姫様」


かぐや姫が客間を通り過ぎようとした時、部屋から呼び止める声が聞こえました。


部屋を見てみると、そこには白装束の小さな子供が片膝を付き頭を垂れていました。


かぐや姫「きゃっ…!貴方…いつの間に?ここへは迷い込んだのかしら…?ねぇ、貴方のお名前は?お父さんとお母さんは…」


かぐや姫が子供に近付いて肩に触れようとした瞬間、子どもは顔を上げ、かぐや姫と目を合わせました。


かぐや姫「貴方は…っ!!」


子ども「かぐや姫様。次の満月の夜。お迎えに上がります」


子どもと目が合ったかぐや姫は何かを思い出したかの様に狼狽うろたえ、真っ青になりました。


爺「かぐや姫?」


かぐや姫「っ…!?」


驚いたかぐや姫は振り向きざまに両手を左右に広げ、後ろが見えない様に遮りました。


婆「どうしたの…?あら?」


かぐや姫「あっ!お婆さん!この子は…!」


お婆さんがかぐや姫の肩越しに後ろを覗き込むと、白くて可愛らしい白猫が居ました。


婆「まぁまぁ!なんて可愛くて綺麗な子なの!」


爺「かぐや姫、隠さなくても飼いたければ飼ってもいいんだよ?」


かぐや姫「…え?」


先程まで白装束の子どもが居た場所には、白い綺麗な毛並みの白猫が座っていました。


白猫はかぐや姫に一声鳴くと、庭に向かって走り、軽々と塀を越えて姿を消しました。


婆「まるでまた遊びに来るとでも言ってるみたいだったねぇ」


爺「あんな可愛いお客さんならいくらでも大歓迎なんだがなぁ!」


かぐや姫「……」


にこにこと話し合うお爺さんとお婆さんを交互に見ながら、かぐや姫は複雑な気持ちに包まれていました。

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竹取物語 ~麗しきマシュマロボディを添えて~ タルトもどき @tartemodoki

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