第5話

 ついに本拠地への侵攻が始まった。

 先頭にはサンダー。続くのはイリー。この二人は攻撃の主力だ。僕の隣にはウズラ。何かあった時には防御してくれる。そして、最後尾にはスター。彼は後方から状況を確認し、適切な魔法を繰り出すのである。

 見事な布陣である。

 いや、実のところ戦法とかよくわからない。オス蟻は子孫を残すためだけに生まれてくるので、大した教育も受けさせてもらえないのだ。

 なんかこう、それっぽくてかっこ良さそうな並びにしてみた。

 もちろん正面突破だけに賭けているわけではない。小型のキノコ者たちが、穴を使って敵の本拠地に近づいている。直進することしかできないやつらだが、それで問題ない。

 蟻たちは、横からキノコに攻められるという経験がない。まあ、縦からもだろうけど。ただそちらはすでに警戒している恐れがある。

 キノコを使う魔法は、僕らの一族の中でもごく一部しか知らないものだ。おそらく敵は、「何ができるのか」が推測できない。

 というのが慢心だと、知ることになった。僕も、敵に何ができるのかを知っていなかったようだ。

「あれは……」

 サンダーが歩みを止めた。つられて、皆も止まる。

 視線の先には、ミミズがいた。ただのミミズではない。普通の二倍ぐらいのサイズがある。そして、こちらをじっと見ている。知能があるようだ。

 おそらく、魔法により強化されたミミズだろう。

「ボクが知っているミミズとは違うね」

 そう言いながら、ウズラは盾を構えた。警戒しているようだ。

「そうだね。あれはやばいやつだ」

「そうは言っても攻めるのみ!」

 サンダーが突っ込んでいく。ミミズの体に剣を振り下ろすが、効いている様子はなかった。そして、ミミズは大きく頭を振った。サンダーの体が吹っ飛ばされる。

 これは、強敵だ。


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