第4話


 あの日、僕は一人だけ生き残った。

 帰りの隊列からはぐれてしまったのだ。こればかりは仕方がない。どういうわけか、蟻というのは誰かが隊列からはぐれてしまう。性格とか注意力とか、そういう問題ではない。ランダムで誰かが離脱してしまうみたいなのだ。

 一説には、一族が全滅しないためだと言われている。

 僕が巣の近くにたどり着いた時には、戦いは終わっていた。

 僕は逃げた。情けないとは思いつつも、一人ではどうしようもないことが分かっていたのだ。そして魔法使いの僕が生き残ったのは運命だと思って、キノコ者たちによって反撃することを考えた。

「オーフレイム様、ちょっといい?」

 頭を振りながら、スターが尋ねてきた。

「なんだい」

「前から疑問だったんだけど、オーフレイム様はオスなのに、なんで働いていたんだい?」

「ああ、そのことね。オスは求愛飛行のあと、交尾するか脱落するかだろ。脱落すると、魔法が得られることがあるんだ」

「へえ!」

「で、そのあとはみんなと一緒に働くことになる」

 働きアリは基本的にメスだ。だから、僕みたいな存在はとても珍しい。とはいえ、彼女たちと共に働くしか、一族に居続ける道はなかったのだ。

「じゃあ、オーフレイム様はもう女王様とは一緒になれないのかい?」

「そうだね。もう、飛べないからね」

 結婚の時期になると、女王様とオスたちには羽が生える。そして、空中で契りを交わすのだ。その時結ばれなかったオスは、普通は死ぬ。僕はとても運がよかった。

「じゃあ、女王様を助けてもオーフレイム様は働きアリ人生ってこと?」

「そうなるね」

「それでいいのかい?」

「もちろん」

「そうか。わかったよ、おいら、全力で頑張るよ」

「ありがとう」

 スターは笑った。光っていた。

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