Root 16 コンコンと違い。


 ――釘とは違う、もっとダイナミックな音。擬音語で表現するならドスンという感じ。



 五寸釘の呪いのような……


 丑の刻参りのようなイメージとは懸け離れて、打ち付けるのではなく叩きつけているようなイメージ。それも丑の刻(深夜一時から深夜三時)よりも、遥かに早い時刻に聞こえてくるという噂もあった。夕暮れ時と、口を揃えて人のいう……


 心当たりは?


 確かに聞こえてくる時もあった。僕のお家は、学園から近い方だから。近所の駄菓子屋に行くと、耳にすることもあった。見たことは、まだないの……


 門限の壁がある。それに下校時間も。


 美術部の夏休みの部活時間は、朝九時から夕方の四時までと決められている。それより早くも、それより遅くも、僕は、決められた時間内でしか、芸術棟のことはわからない。


 知る手掛かりは? イレギュラーが起きるか……


 その行為があったと思われる場所で、痕跡を捜すしか手は残されていないの。


 その場所は一階の方から聞こえると、

 近所の、そして記憶に残っている噂を頼りに調べる……一階には何が? 主に陶芸や粘土細工の場所。轆轤ろくろには痕跡がないと思われるけど、何やら叩きつけたような……すると次の瞬間だ。人影? 人の気配とも? そして背後から「誰だ?」と、


 体の自由を……捕まったの。サーッと血の気が引いて、一瞬のこと。


 僕はグッと歯を食い縛って、冷静さを戻そうと今一度、スーハ―スーハ―と呼吸を意識しながら整える。そう教えてもらったことを思い出した。教えてくれたのは令子れいこ先生だ。


 すると整う……


 無理に抵抗しても、相手の方が力はある。だからこそ、こちらは冷静に……


「あなたこそ誰です? 僕はここの部員の星野ほしの葉月はづきです。……ということで僕は名乗りました。あなたの番です。僕が名乗ったから名乗るのが当然ですよね?」



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