Root 15 十五の団結には。


 ――喩えるならラグビー。十五人の団結。その様に僕らも固い団結。



 その覚悟で向き合う、この十三階段に秘められた謎。十三段目の上には幻の十四段目があると僕は思う。見ることはできないけど、上がる術が解決の鍵なの。


 そして十三階段より前には、大きな四角い穴。


 一階まで貫いている。令子れいこ先生は今ゆっくりと記憶の糸を辿る……僕らは見守る。ゆっくりで大丈夫だからと、想いを込めて傍にいる。するとどうだろう? 令子先生の顔に赤みが戻る。呼吸も整う。「ありがと、君たち」と弱々しくも、でも先程よりは、強い生命力で……そうなの。これから話すことは、軽い話ではないの。



 令子先生には、双子のお兄さんがいた。


 同じお腹の中、ママのお腹の中……それも不幸な事故だった。これから生まれてくる子供のために、今は芸術棟となったこの建物を築いたそうなの。でも欠陥があって……


 それが十三階段となった。


 本当は屋根裏へ続く予定の階段だったそうだ……


 建築途中の見学の際、その十三階段から足を滑らせて、令子先生のママとお腹の中の令子先生の双子のお兄さんは、還らぬ人となった。令子先生だけが奇跡的に助かったの。


 でも、幼少期は誰とも……


 言葉を失った子。そこで、とある美術の先生と出会った。それが九歳の頃のお話で、そして絵との出会いでもあった。蘇る声と言葉……次第に色づく九歳からの人生も……


 涙なしでは語れずに、

 涙なしでは聞けなかったこと……


 熱い涙は三人一緒。この場で見えた十四段目。今はもう十五段まで見えている。虹の階段が見えるこの場所。いつも令子先生を見守っていた、お兄さんとママだったの……


 僕らは胸に刻むの。これからも、悲しくも楽しくも芸術棟の歴史を。



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