Root 14 十四番目の希望。


 ――例えば、十三という数字の次は、十四番目となるよね?



 唐突に何だ? と思われることだけど、咄嗟に僕の脳内に現れた数字……何らかのキーワードになると思われる。直感的なことだから、まだ語るに至らないけれど、


 ちょっとばかり付き合ってほしいの。



 十三階段の次にあるもの……


 それこそがヒント。しかし階段は、幾度見てもそこまでしかない。では、その周りには……下に繋がる大きな穴? 吹き抜けとはやや違う。そこから覗いてみると、


 何も……何もない。


 きっと、真下へ落ちる仕組みとなっている。


 考えられることは一つだ。過去に落ちたとしか考えられない。十三階段を上り切った後に……そこから先がないのだから。じゃあ、その落ちた人物とは? まさか……


 白い背景の中、青褪めた顔が物語っている。


 記憶には残されていないか、咄嗟のことで、崩れて埋もれた感覚……


 あくまで憶測だけど、憶測という言葉で片付けるには、あまりにも挙動不審。令子れいこ先生のこれまでに見ることのなかった表情を、目の当たりにすることとなる。


「落ちたの。ここから……」


 震える口から洩れる音声。ミュートに近い声だったけど、僕の耳は間違いなくその言葉を認識した。覆すことのない事実が見え隠れ……証明するものを捜す。僕は思う。


 ――そこに、あるはずだと。


 長年、令子先生が乗り越えたかったこと。そして前向きになれる十四番目に、一歩踏み出せる時が来たることを。まさにこの時期だと思う。僕がこの場所を初めて訪れた日のように。引っ込み思案だった僕が、その日を境に変われたように。今度は僕が……


 星野ほしの葉月はづき都築つづき怜央れお君が、あなたを導く番だから。



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