Root 09 例えば賽子の目。


 ――振出に戻る。とある双六のように。あくまで賽子の目に従っただけなのに。



 そしてまた、賽子の目だけに賽は投げられた。


 翌日になったのなら、また一日の始まり。昨日までの不思議は、あくまで昨日までの物語。今日からは新たなる不思議が始まるの。……少し、その前に、ちょっとばかり……


 脱線してみる。


 従ってその場所は僕のお家、僕のお部屋。つまり葉月はづきルームだ。


 アトリエとの共通点は二階にある。ベッドも完備しているから、結構広いそうなの。とある同じ名字の双子の先輩たちが、僕のお部屋を見ての御感想……そこで思い出した。



 怜央れお君は、浮気をしていた。

 ……発覚した。昨日の夕映え……これで三回目。


 僕と知り合って間もなき頃は、とある双子の先輩の妹……もう名前出しちゃうね、千佳ちかという先輩。怜央君は溜口だったの、先輩なのに。でも、千佳先輩には彼氏がちゃんといて……しっかりと恋に破れたの。千佳先輩に彼氏がいたことは知っていたけど、僕は怜央君に黙っていた。不謹慎だけど、僕は千佳先輩を利用した。ある意味では、嫉妬していたのかもしれない。怜央君が僕に振り向いてくれるようにと、心の何処かで願っていた。


 思惑通りになったわけ……


 でも、予想外もあった。怜央君は千佳先輩の彼氏と師弟ともいえる関係を、僕の知らないうちに築いていた。それは何のため? 僕を守るためだと真っ直ぐな志。


 もう振り向いていたの。


 なので浮気など微塵もないことの、確固たる証明をした三回目となった。


 明峰メイホウさんの美しさに靡いたように見えても、怜央君はほら……SNSで『お早う。今日からは新たな不思議に挑戦だ。ファイト!』と。……どう返信したらいいのだろう? 意味不明だけど、今日も僕は芸術棟へ字馳せ参じる。あとはノリで返信となった。



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