Root 10 紐解けば芸術棟。


 ――そこに見るものは歴史。七不思議は、原点に帰りたがっているの。



 芸術棟というこの場所。御伽にも思える周囲の風景も、そうアピールしている。それは今ここに立ち尽くす僕に。そしてまた……お盆も近づくこの時、この瞬間さえも。


 見える白い影……


 遠い日の、この建物の主というべき人物。紐解かれる歴史は想い出と共に、残された品物が共鳴して伝えてくる。まずこの芸術棟といわれる建物は、元々が個人のもの。


 その人と生を共にした歴史……


 その人の魂が刻まれる歴史……


 その人が小さい頃に、親が与えてくれたビッグなお友達。影法師ともいえる存在なのかもしれない。遊び場であり、お勉強の場でもあり、最後は……青春の場となった。


 この芸術棟に存在するからくりは、きっとこの主の遊具。


 それが七不思議を生んだ。学園の施設となったからには、その謎を解かねばならないことこそが、今ここにいる僕の使命と、この物語はその自覚へと導いたの。


 次なる謎は、まさにこれ。


 この芸術棟の真の持ち主。その歴史を紐解くことにある。


 その鍵は何処に? それは物語の原点となったこの場所。……かつては開かずの扉だったアトリエのドア。つまりアトリエこそが物語の原点を示している。原点以外に始まりもなく終わりもない。きっと物語の終わりは、この場所に帰ってくることが約束だ。


 なら……


 僕は出会っていた。その人、幾十年の時を越えてその主に。命をも超えた場所で出会った師匠との出会いだ。そして見える白い影……


 ――久しぶりだね。との言葉が空気を変えて。電光石火の雷か? 季節をも容易に超えたお盆間近な出会い。白い朝靄の中に見える白い影。抽象的な印象を与えた……


 けれども僕は、きっと待ちに待っていたのかもしれない。この上ない笑顔……



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