8月30日

 8月30日、夏休みの最終日を前に僕はオオバさんのところには行かずに自分の部屋にいた。別にあの夢のような三日間のようにオオバさんを家に招いたわけでもないし、母さんも虚ろな目をしながら家事をしている。

では、何故家にいるのか。それは今日を選択の日としたからだ。この一ヶ月、僕は初日にオオバさんと出会ってその魅惑的な肉体によって一人の少年から男へと変わり、その後もオオバさんが放つ蠱惑的な匂いで脳を支配され、僕を誘うような下着姿や水着姿、浴衣姿に昂らされて何度もオオバさんという甘く熟した果実を一心不乱に貪る性の獣となった。

その中で僕は同じ水泳部でクラスメートでもある若宮愛奈さんに酷い態度を取った挙げ句、そのまだ肉体的にも精神的にも未熟な彼女の肉体を好き勝手にし、その後も彼女を傷つけるような事を言った。

この件について言い訳をするつもりはない。オオバさんの肉体の虜になっていた中でそれを若宮さんが邪魔してきた事を怒りはしたが、僕だって世間からすれば非難されるような事をしていたわけで、今になって思えば彼女の行動はちゃんとしていたのだ。だから、直接会って謝罪をし、もしも体に何か変調があれば、しっかりとその責任は取るつもりだ。


「……さて、どうしようか」


 目の前で手を組みながら独り言ちる。僕の目の前には幾つもの道があり、その道を進むなら何かは切り捨てなくてはならず、その道を進む前にその覚悟を決めなくてはならない。

だけど、それは僕がしないといけない事なのだ。二人の異性の肉体を貪り、この夏の内に少しでも熟れた僕だからこそしなければならない選択なのだ。

因みに、これは誰にも相談出来ない事なので、僕が一人で考えて決めないといけない。先生やクラスメート達はもちろん、母さんにもオオバさんの事を話したらすぐにオオバさんのところへ行ってしまいそうだし、父さんもすっかり愛人の虜になっているようなので相談は出来ない。

本来はまだ中学生の僕が考えて決める事ではないけれど、さっきも言ったようにこれは二人の異性とこの夏の内に深く関わり、その人生を大きく変えてしまった僕が果たすべき責任だ。だから、今日の内に決めよう。そして、明日になったらそれをしっかりと実行するんだ。


「……決めた」


 これまでの事を思い返しながら考え、僕は一つの結論を出した。これが合っているかはわからないが、これは僕が決めた事だ。だから、ちゃんとしよう。僕達を変えた夏が終わる前に。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る