8月29日

 8月29日、相変わらず両親は喧嘩したままで父さんは例のアナさんと昨夜も会ってきたようだったが、深夜にトイレのために起き出した時に部屋の中ではまた気持ち良さそうに携帯を片手にイヤホンをつけながら自分を慰めているのをみかけた。

そしてどうやらそのアナさんとの情事では避妊はしてない上に興奮を高めるための媚薬なども用いているみたいで、画面を見ながら楽しそうにそれを選んでいる姿に僕は離婚も秒読みだろうなと感じながら部屋を後にした。

そしてそんな人を父に持つ僕は今日もオオバさんに会いに行く。二回りも歳が離れた人とほぼ毎日肌を重ねてきた僕と若い愛人との情事に勤しむ父さん、と夏野家の男衆はなんとも性に対して少し奔放すぎる気はするが、不貞を働く父さんと違って僕はまだマシな方だ。

以前、オオバさんは未婚な上に交際相手もいないと聞いているので、歳の差以外はまだ何も問題はない。僕達も世間から見ればイケナイ関係だが、向こうに比べたらまだ良い方なのだ。


「……でも、少しずつオオバさんとの関係についても色々考えていかないと。僕はオオバさんとの関係はこれからも続けたいけど、このままただ体だけの関係のままっていうのはよくないし……」


 個人的にはオオバさんとの関係はしっかりとした恋人という関係にしていきたい。だけど、オオバさんが関係の継続を拒むなら僕はそれでも納得する。以前の僕なら無理にでも関係は続けようとしただろうけど、今ならそれがよくないとわかるし、この関係についてどこかで何かしらの選択をしないといけないのだ。

そんな事を考えながら歩く事十数分、いつものように廃墟につき、縁側に座るオオバさんを見つけて、僕はオオバさんに近づいた。


「オオバさん、こんにちは」

「あら、いらっしゃい。お家の方はどう?」

「相変わらずです。父さんも変わらず浮気相手と不倫してるみたいなので、離婚も秒読みかなと……」

「……そう。それが青志君のお父さんの選択ならば仕方ないのかもしれないわね。そして、私達も色々選択を迫られるのよね……」

「……はい」

「……青志君、君もその時にはしっかりと考えた上で選択するのよ。貴方に対してこれまでイケナイ事をしてきた私が言う事ではないけれどね」

「……そんな事はないですよ。誘ってきたのはオオバさんでもそれに乗ってここまで続けてきたのは僕ですから」


 その言葉にオオバさんは驚いたが、すぐに優しい笑みを浮かべた。


「……やっぱり、君はこの夏で色々な意味で大人になったみたいね。言うなれば、“夏に熟れた”と言ったところかしら?」

「そうかもしれません。でも、青い果実だった僕が熟れたのは既に熟れていたオオバさんがいたからです」

「……そう。それじゃあ今日は甘えなくても良さそう?」

「あ、いえ……それはさせてもらえたら嬉しいですけど……」

「ふふ、少しは熟れてもまだまだ甘えん坊ね。良いわよ、それじゃあ行きましょう?」

「……はい」


 返事をした後、僕はオオバさんと一緒に縁側に上がり、愛おしさを感じながら和室へと入ってそのまま破れ障子を閉めた。

少し熟れる事が出来ても、オオバさんにはまだまだ敵わないようで僕は今日もオオバさんのその見事な技術と肉体に溺れ、ゆったりと味わい尽くしていった。

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