9話 距離

やはり入学した時から変わってない。

彗はそう思いながら生徒会室に戻り席につけば、大きなため息をついた。

「先輩、戻ってたんだね。」

「すまない、先に行ってしまって。」

こんなに沢山貰ってどうしたものかと考えていると、郁利がやってきて声をかける。

彼が心配で追いかけてきたのだろう。

「先輩が行きたくなかったのは、されるからだったんだね。」

相手の言葉に彗は頷くと、少し寂しそうな表情を見せた。

財閥の息子というだけで誰とも距離を置かれてしまうのだから。

話しかけても怒らせまいと愛想笑いをされ、気を使われ親の地位と名誉が邪魔をする。

「確かに嫌だよね。でも意外と話してみたら僕みたいな人もいるかもしれないから元気だして!」

郁利は相手の様子をみて励ますよう明るく話すと、彼はお礼を言って購買でもらった品物を手に取る。

「良ければ一緒に食べてくれないかい?」

「もちろん!」

相手の提案に郁利はにっこりと笑うと、彗にオススメの商品を紹介しながら実際一緒に食べたりと楽しい時間を過ごしたのだった。


果たして彼が周りの人々に馴染める日は来るのだろうか。





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生徒会長はお一人様? 雪ウサギ @yukiusagi-839

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